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東京人の堕落時代
とうきょうじんのだらくじだい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「夢野久作全集2」 ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年6月22日
初出「九州日報」1925(大正14)年1~5月
入力者柴田卓治
校正者かとうかおり
公開 / 更新2000-04-28 / 2014-09-17
長さの目安約 252 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

はしがき



 この稿は昨年末まで書き続けた「街頭より見たる新東京の裏面」の別稿である。記者は特にこの稿を作るためには、単に街頭観にのみ依らず、この方面に責任を持っている医師、教育家、司法官、興行者、その他多数の人々に御迷惑をかけて記事の正確を期した。そのような人々の意見とても、記者が実地に調査し且つ共鳴し得たところだけを記者の意見として責任を負うて書いたのであるから、一々氏名を挙げる事は遠慮した。本人の御迷惑になる意味もあるし、さもなくとも不公平になる点が多いから一様に差し控えた訳である。ここに謹んでお詫びをすると同時にお礼を述べておく。只その中に警視庁の不良少年少女係後藤四方太氏はこの稿のために非常に有力なヒントを与えてくれた。特に記して謝意を表する事を許して頂きたい。
[#改ページ]


各方面の徴候




和漢洋の堕落風俗

 東京人は今や甚だしい堕落時代を作っている。西洋風、支那風、日本風のあらゆる意味で堕落腐敗し糜爛して行きつつある。
 その影響は日本全国に行き渡りつつある。仮令これを一時の事と見ても、その影響はかなり永く後を引く虞れがある。
 現在の日本人は「東京」を無暗に崇拝している。何でも東京が本場でなければならぬ。すべてのものは東京が最新式の最上等と心得ている。この意味から見て東京人の堕落はやがて日本人の堕落である。三百里先の事と思うのは昔の頭である。
 この現象がいつ迄続くか。浜口蔵相の節約主義がこれをどの辺で喰い止めるか。
 この疑問が解決される時機は手近く見たところで今年の三四月であろう。毎年の花時……特に昨年の花時は東京の人気に一大変化を画した時であったから。
 しかし今の通りの勢ならば、東京人の堕落傾向はなかなか止まるところでない。却てこの花時を区切って全盛時代を見せるかも知れぬ。又は第二期の深刻味をあらわし始めるかも知れぬ。
 いずれにしてもこの春が問題である。この記事がそうした人気や風俗の移りかわりを見分ける標準となったら幸である。
 更に地方の特色の美しさや尊さを忘れて、東京を神様のように思っている人々のために、又はその子弟を東京に遣っている人々のために参考となったら、記者の苦心はどれ位酬いられるであろうか。

警視庁の映画検閲官曰く

 東京人の堕落時代を描き出す前に、取り敢ず読者の記憶を呼び起しておかねばならぬ事がある。
 昨冬二十六日付の九州日報夕刊に大略左のような記事が載っていた。

       ×         ×         ×

 大正十三年の一月から十一月まで警視庁で検閲した映画の数が一万八千巻、千六百呎、切った長さが約六万呎……以て如何に「活動」が盛であるかがわかる。
 次に切ったフイルムを国別にして見ると、
      検閲巻数        同上呎数       切除呎数
日本物    七…

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