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骨董
こっとう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「幻談・観画談 他三篇」 岩波文庫、岩波書店
1990(平成2)年11月16日
入力者土屋隆
校正者オーシャンズ3
公開 / 更新2008-02-06 / 2014-09-21
長さの目安約 39 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 骨董というのは元来支那の田舎言葉で、字はただその音を表わしているのみであるから、骨の字にも董の字にもかかわった義があるのではない。そこで、汨董と書かれることもあり、また古董と書かれることもある。字を仮りて音を伝えたまでであることは明らかだ。さてしかし骨董という音がどうして古物の義になるかというと、骨董は古銅の音転である、という説がある。その説に従えば、骨董は初は古銅器を指したもので、後に至って玉石の器や書画の類まで、すべて古いものを称することになったのである。なるほど韓駒の詩の、「言う莫かれ衲子の籃に底無しと、江南の骨董を盛り取って帰る」などという句を引いて講釈されると、そうかとも思われる。江南には銅器が多いからである。しかし骨董は果して古銅から来た語だろうか、聊か疑わしい。もし真に古銅からの音転なら、少しは骨董という語を用いる時に古銅という字が用いられることがありそうなものだのに、汨董だの古董だのという字がわざわざ代用されることがあっても、古銅という字は用いられていない。[#挿絵]晴江は通雅を引いて、骨董は唐の引船の歌の「得董[#挿絵]那耶、揚州銅器多」から出たので、得董の音は骨董二字の原だ、といっている。得董[#挿絵]那耶は、エンヤラヤの様なもので、囃し言葉である、別に意味もないから、定まった字もないわけである。その説に拠って考えると、得董または骨董には何の意味もないが、古い船引き歌のその第二句の揚州銅器多の銅器の二字が前の囃し言葉に連接しているので、骨董ということが銅器などをいうことに転じて来たことになるのである。またそれから種[#挿絵]の古物をもいうことになったのである。骨董は古銅の音転などという解は、本を知らずして末に就いて巧解したもので、少し手取り早過ぎた似而非解釈という訳になる。
 また、蘇東坡が種[#挿絵]の食物を雑え烹て、これを骨董羮といった。その骨董は零雑の義で、あたかも我邦俗のゴッタ煮ゴッタ汁などというゴッタの意味に当る。それも字面には別に義があるのではない。また、水に落つる声を骨董という。それもコトンと落ちる響を骨董の字音を仮りて現わしたまでで、字面に何の義もあるのではない。畢竟骨董はいずれも文字国の支那の文字であるが、文字の義からの文字ではなく、言語の音からの文字であって、文字は仮りものであるから、それに訓詁的のむずかしい理屈はない。
 そんな事はどうでもいいが、とにかくに骨董ということは、貴いものは周鼎漢彝玉器の類から、下っては竹木雑器に至るまでの間、書画法帖、琴剣鏡硯、陶磁の類、何でも彼でも古い物一切をいうことになっている。そして世におのずから骨董の好きな人があるので、骨董を売買するいわゆる骨董屋を生じ、骨董の目ききをする人、即ち鑑定家も出来、大は博物館、美術館から、小は古郵便券、マッチの貼紙の蒐集家まで、骨董畠が世界各国都鄙…

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