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中国怪奇小説集
ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
副題11 異聞総録・其他(宋)
11 いぶんそうろく・そのた(そう)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「中国怪奇小説集」 光文社文庫、光文社
1994(平成6)年4月20日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄
公開 / 更新2003-09-24 / 2014-09-18
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 第九の男は語る。
「わたくしは宋代の怪談総まくりというような役割でございますが、これも唐に劣らない大役でございます。就いてはまず『異聞総録』を土台にいたしまして、それから他の小説のお話を少々ばかり紹介いたしたいと存じます。この『異聞総録』はまったく異聞に富んだ面白いものでありますが、作者の名が伝わって居りません。専門の研究家のあいだにはすでにお判りになっているのかも知れませんが、浅学寡聞のわれわれはやはり作者不詳と申すのほかはございませんから、左様御承知をねがいます」

   竹人、木馬

 宋の紹興十年、両淮地方の兵乱がようやく鎮定したので、兵を避けて江南に渡っていた人びともだんだんに故郷へ立ち戻ることになった。そのなかで山陽地方の士人ふたりも帰郷の途中、淮揚を通過して北門外に宿ろうとすると、宿の主人が丁寧に答えた。
「わたくしもこの宿舎を持っているのですから、お客人を長くお泊め申して置きたいのはやまやまですが、あなた方に対しては正直に申し上げなければなりません。何分にも軍のあとで、ここらも荒れ切っているので、家はきたなくなっているばかりか、盗賊どもがしきりに徘徊するので困ります。ここから十里ばかり先に呂という家がありまして、そこは閑静で綺麗な上に、賊をふせぐ用心も出来ていますから、そこへ行ってお泊まりなさるがよろしゅうございます。わたくしの家から僕や馬を添えてお送り申させますから」
 ふたりは素直にその忠告を肯いた。殊に呂氏の家というのもかねて知っているので、それではすぐに行こうと出かけると、主人は慇懃に別れを告げた。
「どうぞお帰りにもお立ち寄りください。もう日が暮れましたから、馬にお召しなさい」
 主人は達者そうな僕二人に二匹の馬をひかせて送らせた。途中も無事で、まだ夜半にならないうちにかの呂氏の家にゆき着くと、家の者は出で迎えて不思議そうに言った。
「近頃この辺にはいろいろの化け物が出るというのに、どうして夜歩きをなすったのです」
 二人はここへ来たわけを説明して、鞍から降り立とうとすると、馬も僕も突っ立ったままで動かない。
 すぐに飛び降りて燈火に照らしてみると、人も馬も姿は消えて、そこに立っているのは、二本の枯れた太い竹と、二脚の木の腰掛けと唯それだけであった。竹も木も打ち砕いて焚かれてしまったが、別に怪しいこともなかった。
 それから五、六カ月の後、ふたたび先度の北門外へ行くと、そこは空き家で、主人らしい者は住んでいなかった。
(異聞総録)

   疫鬼

 紹興三十一年、湖州の漁師の呉一因という男が魚を捕りに出て、新城柵界の河岸に舟をつないでいた。
 岸の上には民家がある。夜ふけて、その岸の上で話し声がきこえた。暗いので、人の形はみえないが、その声だけは舟にいる呉の耳にも洩れた。
「おれ達も随分ここの家に長くいたから、そろそろ立ち去ろうで…

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