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ソヴェト・ロシアの現状勢と芸術
ソヴェト・ロシアのげんじょうせいとげいじゅつ
作品ID2645
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第九巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日
初出「読売新聞」1930(昭和5)年11月9日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2002-11-08 / 2014-09-17
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 現代のソヴェト・ロシア一般の社会現象及び芸術について話す場合、当然現在第三年目に入ったソヴェト生産拡張五ヵ年計画を根柢に於て見なければならない。五ヵ年計画によってソヴェトに於ける社会主義的社会建設の為め大飛躍と大努力を続けていると同時に、芸術の方面もこれにつれて最近二年間に種々のものを清算し内容的に新たなものを加えた。
 例えば、日本にピリニャークが来た時代はソヴェト文壇はよい作品を書く作家と云えば、大体、同伴者或は鍛冶屋派の作家であった。ところが、最近文壇の指導勢力は最も社会主義的社会建設の為に、ハッキリした理解と協力し得る最左翼の芸術団体であるプロレタリア作家連盟が握って来た。その中にいろいろ分かれて来て鍛冶屋派や構成派を合同しようとしている。だけど、合同する為には、各団体がイデオロギー的に清算しなければならないものが、たくさんにある。現にそうするべく努力し、試みている。
 今年の秋から今まであった工場内の文学研究会――それは一日七時間労働で、五日週間故に五日に一度位――を生産経済計画の線に依って芸術的に、大衆的に発育させようとする努力が非常に活溌にはじめられている。そして工場新聞、壁新聞を通じて芸術と生産とをしっかり結びつくように、プロレタリアイデオロギーとして一層活溌に文学研究会員が指導する。五ヵ年計画で各地には大工場が新設されたし、集団農場も各地に非常に盛んに新設されて、作家がそう云う場所に、芸術団体、或は雑誌新聞から派遣されて、そこで実際の建設事業を見て、労働者の生活に触れて、その印象、記録、報告などを書かせる。それが新しい作家の分野になり、一つの新しい報告文学と云うようなものが出初めている。それは新しい作家を導き出すいいことだし、勉強にもなっている。共産党青年で有望な若い人がたくさんにその辺からも出ている。現在、最も活動している作家の一人にファデーエフなどあるが、彼は共産党員でプロレタリア作家連盟の指導者である。
〔一九三〇年十一月〕



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