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ゴルフ・パンツははいていまい
ゴルフ・パンツははいていまい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「婦人公論」1932(昭和7)年1月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-07-06 / 2014-09-17
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 これは、いかにもひま人らしい質問です。同時に、一寸ニクマレ口をきかしてもらえば、いかにも婦人雑誌の特徴を発揮した質問です。
 なぜなら、恋愛問題だけをきりはなし、例えば正月、炬燵にあたったり、ハイカラなら、電熱ストーブにでもあたりながら、
「ねえ、今度恋愛するとしたら、どんなのしたい?」
「さあ」
「婦人公論の新年号みた? あるわよ、いろんなのが……」
などという会話をとりかわすのは、一体どんな婦人及彼女の彼氏たちでありましょうか?
 朝六時に、霜でカンカンに凍った道を赤い鼻緒の中歯下駄で踏みながら、正月になっても去年のショールに顔をうずめて工場へ出かける十一時間労働の娘さんをそういう会話の主人公として想像するのは困難です。どうも、ウェーヴした前髪、少くとも銘仙の派手な羽織、彼女の坐っているのはよし古風なコタツであろうとも、座布団のわきにはハンド・バッグがありそうに思われる。――つまりこれは読者のきわめて小ブルジョア的興味によびかけ何枚かの銀貨を釣り出そうとする、ブルジョア婦人雑誌つきものの猫とそのシッポの如き題目なのであります。
 さて、この質問の題を見ると、「今度恋愛するとしたら」とある。前に恋愛をした君が、こんどやるなら、という意味でありましょう。
 それで、私のところへこの質問がよこされたわけが分ります。私はなるほど、これまでいくつか小さい恋愛をし、最後には旦那に熱中しているという意味で「ダンネ」という恐るべきアダ名を弟及その友達たちにつけられるに至った。
 それが中折れして、今は女の友達と暮している。だから定めし今度の恋愛には申し分があろうと思われたらしい。
 第一に恋愛というものを、私は社会的階級的全生活の一部分として理解しているが、決して恋が命とは考えていません。心中する芝居を見るとカンシャクをおこす女であります。
 又、恋愛はひどく、その人の程度=イデオロギー的にも、性格的にも=を示すものであります。何とか彼とか、偉そうなこと、つよそうなこと、階級的そうなことを云っても、対手の女を見ると、その男の非公式な部分、書いてない部分が露出している。
 女の場合も同じです。
 芸術や恋愛が、階級性ぬきのどこやら超現実的なもののように感じられているとしたら、とんだ間違いです。
 一人の女が小ブルジョア的な人道主義、偸安主義の生活を何かの必然的動機ですて、プロレタリア解放のために一つの役割をもって生活するようになれば、キット、生活の変化は恋愛と恋愛観の変化を起すにきまっている。
 そうではありませんか?
 例えばK子は、これまで通りK会社へ勤めてはいる。けれど、会社がひければ或る日は研究会へ出席し、或る日曜日は全協[#「全協」に×傍点]の一般使用人組合の仕事を手伝わなければならなくなって来た。
 それだのに、彼O氏は、K子の生活変化の必然性を理解しないば…

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