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新しい卒業生の皆さんへ
あたらしいそつぎょうせいのみなさんへ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出「新しい卒業生のための集会」(婦人民主クラブ・民主保育連盟共催)へのメッセージ、1948(昭和23)年3月30日開催、「婦人民主新聞」1948(昭和23)年4月8、15日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-23 / 2014-09-18
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 きょう、この会に出席して、みなさまにお目にかかれないのを、ほんとうに残念に思います。去年の秋、過労して健康をわるくしてから、おはなしができないで、ずいぶんあちこちの学校からの御希望に添えませんでした。そういう学校からの方たちも、あるいは、新しい卒業生としてきょうの会に御出席かもしれません。それを思うと、一層ひとこと御挨拶をしたい心持がして、これをかいております。

 みなさまはこの数日来、卒業し、送別会、上級学校の新入生としての歓迎会と、若々しい人生の一つの門から他の門へとおくぐりになりました。その間に、いろいろのことをお感じになっていることと思います。そのさまざまな感じのなかで、きょうに生きる若い女性として一番痛切に感じていらっしゃることは何でしょうか。
 専門学校を卒業したかたは、それぞれ就職のために忙しい日を送られたでしょう。就職しない方の気持にはどんな思いがあるでしょうか。この間から、わたくしはたびたびこういう不安をききました。やっと家のものを説得して専門学校は出たけれども、出てから先の生活を考えると、何ともいえない心持がして来る、だって、その先にある生活は、もう大体わかっているんですもの、と。そういう述懐をもっている方は、きょうの会に来ていらっしゃる方々の中に一人もないでしょうか。女学校を卒業する人からの手紙で、一番心痛の種になっていることは、もっと何か勉強したい自分の心と、お嫁入りということだけを先に見ていて、洋裁でも稽古していればそれで十分だと考える親たちとの意見のくいちがいです。この二つの悩みのどっちをとってみても、きょうの若い女性がどんなにゆたかな進歩した人生を欲しているかという事実と、反対に、日本の社会の現実はまだなかなか若々しくどこまでも伸びようとする女性のねがいの枝を撓める状態におかれているという現実を語っていると思います。
 きょうの若い女性に出あって、一つ、きわめて率直な質問をいたします。あなたは、あなたのお母さんが生きていらしたとおりの女の一生を御自分でくりかえして見たいとお思いですか、と。――そうきかれたとき、幾人のかたがイエスとお答えなさるでしょう。ほとんど大部分のかたは、母のいとしさ、母への思いやりいたわりとは別に、これまで日本の女がおかれて来た生活の現実を、重くおそろしいものに見ていられるのが事実でしょう。母はほんとに尊敬します。ある意味で実にえらいとも思う。けれども、わたしたちの人生は、もっと別なものであるべきだと思います。母たちのことをしみじみ思えば、母への愛のためにも、わたしたちはもっとちがった人生をくみたててゆかなければならないと思う。私は、現実に幾度もこういう話題について語る若い方々の意見をきいております。
 現代の世紀には、世界じゅうの女性が、それをきらっている一つの言葉があります。それは「歴史はくりかえす…

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