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怪塔王
かいとうおう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第6巻 太平洋魔城」 三一書房
1989(平成元)年9月15日
初出「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日
入力者tatsuki
校正者kazuishi
公開 / 更新2007-02-12 / 2014-09-21
長さの目安約 345 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   怪老人



     1

 怪塔王という不思議な顔をした人が、いつごろから居たのか、それは誰も知りません。
 一彦とミチ子の兄妹が、その怪塔王をはじめてみたのは、ついこの夏のはじめでありました。
 そこは千葉県の九十九里浜というたいへん長い海べりでありました。一彦は中学の一年生であり、ミチ子は尋常の四年生でした。二人は夏休がはじまると、まもなくこの九十九里浜へまいりました。
 二人はたいへんふしあわせな兄妹で、小さいときに両親をうしないました。そののちは、帆村荘六という年のわかいおじさんにひきとられ、そこから東京の学校にも通わせてもらっていました。
 帆村荘六というと、ご存じのかたもあるでしょうが、有名な青年探偵です。帆村探偵という名は、きっとどこかでお聞きになったでしょう。荘六おじさんは機械のことになかなかくわしい人です。理学士だそうですからね。
 荘六おじさんは、夏休をむかえた兄妹を、この九十九里浜にある別荘へ遊びにやってくれました。
 九十九里浜は、なかなか景色のいいところです。そして実にひろびろとしたところで、さびしいくらいのものです。
 怪塔王に出会ったのは、一彦とミチ子がここへきてから、二三日のちのことでありました。兄妹が、波うち際で、貝がらをひろって遊んでいますと、うしろでざくりざくりと砂を踏む音がするではありませんか。
「だれかしらん」
 と、うしろをふりかえってみると、背のひょろたかい一人の老人が、腰を曲げてよぼよぼと歩いていきます。肩には何がはいっているのか、大きな袋をしょっていました。
 一彦は、そのとき下から老人の顔をちらと見上げましたが、おやと思いました。なぜといえば、その老人の顔がいかにも奇妙な顔だったからです。

     2

 砂の上をざくざくと歩いてゆく老人の顔が、たいへん奇妙だったといいましても、決してこわい顔だの、おそろしい顔ではありません。
 いや、むしろおそろしいの反対で、ずいぶん滑稽な顔なのです。それは、よくお祭のときなどに、つくり舞台のまんなかへ出てきて滑稽なことをやってひとを笑わせるひょっとこだの、汐ふきだのというおかしい面をかぶった者がありますが、そのうちであの口のとんがった汐ふきそっくりの顔をしていたのです。
(あははは、おかしいな)
 と笑おうとした一彦でしたけれど、老人を笑うなんてよくないと思って、あわてて笑をかみころしました。
 汐ふき顔の老人は、なんにも気がつかないという風に、兄妹のうしろをとおりすぎました。そしてどこまで行くのか、袋を肩にかついだままとぼとぼと浜づたいに向こうへいってしまいました。
「ミチ子、いまのお爺さんの顔を見た」
「ええ見たわ。口が狐のようにとんがって、ずいぶんおかしかったわ。兄さんも見たの」
「うん、僕も見たとも。笑いたくてね、それをこらえるのにとても困っちゃっ…

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