えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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悪魔の足
あくまのあし
原題THE ADVENTURE OF THE DEVIL'S FOOT
著者
翻訳者枯葉
文字遣い新字新仮名
底本 「"His Last Bow"所収 "The Adventure of the Devils Foot"」 
入力者枯葉
校正者
公開 / 更新2001-06-12 / 2014-09-17
長さの目安約 50 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ミスター・シャーロック・ホームズとの親しい友情関係もずいぶん長く続いている。その中で見聞きした面白い体験や回想を時に応じて記録してきたが、ホームズ自身が宣伝行為を嫌っていたために公表にあたっては常々困難と直面してきた。内向的で辛辣なホームズにとって、大衆の称賛はいつだって嫌悪すべきものだった。また成功に終わった事件についても、警察関係者に事件の摘発を任せてしまい、見当違いの方向に送られる賛辞の大合唱に冷笑を浮かべながら耳を傾けるのを何よりの愉しみにしていた。ここ数年記録をほとんど公にしていなかったのは、実際のところ、ホームズのこの態度が原因で、決して面白い題材を欠いていたわけではない。私は、ホームズの冒険に参加したりする特権を持っていたけれども、それは思慮と沈黙を私に負わせるものでもあったのだ。
 だから、あのとき私はかなり驚いた。先の火曜日、ホームズからきた電報に――ホームズは電報の届くところに手紙を書くような人間ではない――こんなことが書いてあったのだ。
 コーンワル ノ キョウフ ヲ コウヒョウセヨ――ボクガ テガケタ モットモ キミョウナ ジケン ヲ.
 どんなきっかけからこの事件を思い出したのか、そしてどんな酔狂から公表されるべきだと望んだのかは分からない。だが急いで――ホームズからキャンセルの電報がくるかもしれない――この事件の詳細を正確に書き記したノートを探し出し、読者諸氏にその物語を聞かせよう。
 あれは、そう、1897年の春、ホームズの鋼の体にも翳りが見られるようになった。きわめて厄介な依頼が連続的にやってきたこともあるし、おそらくは時折やらかす無茶の数々に拍車をかけられたのだろう。その年の3月、ハーレー街のドクター・ムーア・アガー――この人とホームズとの劇的な出会いについてはそのうちお話することがあるかもしれない――はこの有名な私立探偵に、全事件を凍結して完全な休息に身を委ねよ、さもなくば確実に体を壊すであろう、という強い勧告を与えた。ホームズは絶対的な知的独立性をもっていたから、健康状態など興味をよせるに値する問題ではなかったが、結局は、仕事を続ける資格を永久に失ってしまうだろうという脅しによって、新鮮な空気と風景のもとで静養することに同意した。そういうわけであの年の早春、我々はコーンワル半島の先端、ポルドュー湾に近い小さなコテージで過ごしていたのだった。
 風変わりな場所、私の患者の重苦しい気分には妙によく似合った場所だった。我々の漆喰の家は草深い岬にあり、窓からマウント湾の薄気味の悪い全景を見おろすことができた。この半円形の湾では、無数の海の男たちが、黒く切り立つ崖と波に潜む岩礁によってその最後を遂げている。行き交う船にとって古くからある死の罠だ。北からの微風が吹く中、穏やかに、包み込むように横たわり、嵐に揺れる船に誘いかける。安…

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