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ブルー・カーバンクル
ブルー・カーバンクル
原題THE ADVENTURE OF THE BLUE CARBUNCLE
著者
翻訳者枯葉
文字遣い新字新仮名
底本 「"The Adventure of Sherlock Holmes"所収 "The Adventure of the Blue Carbuncle"」 
入力者枯葉
校正者
公開 / 更新2001-06-12 / 2014-09-17
長さの目安約 38 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 クリスマス後2日目の朝、私はシャーロック・ホームズに祝いを言っておこうと思い、部屋を訪れた。ホームズは紫色のガウンにくるまってソファに持たれかかっていた。右側のパイプ置きは手が届くところにあり、手元には、調べたばかりに違いない、皺だらけの朝刊が山積みされている。ソファのそばには木製の椅子があって、背もたれの角にひどくみっともない帽子がかかっていた。かなりくたびれており、ひび割れているところがいくつもある。レンズとピンセットが椅子に乗っているところからして、この帽子は分析するためにこうしてあるらしい。
「仕事中か」と私。「邪魔かな」
「ちっとも。成果を話す相手がきたんで嬉しいよ。問題はじつにくだらない」――ホームズは例の古帽子に親指を向けた――「が、その裏にはおもしろい点もあるし、ためになる点だってないわけじゃない」
 私はホームズの肱掛椅子に腰を下ろし、ホームズの前の爆ぜかえる暖炉で両手を暖めた。外には厳しい霜がおり、窓は厚い氷のクリスタルで覆われていた。「どうやら」と私は言った。「見た目こそありふれているけど、これにまつわる恐ろしい話があるらしいね――そして、それが手がかりとなり、君は謎を解き明かしてその犯罪を裁く」
「違う、違う、犯罪とは違うんだ」ホームズは笑い出した。「気まぐれな、くだらない偶発事のひとつだよ。ほんの数平方マイルの土地で400万の人間が押し合いへし合いやっていれば、こんな事件も起きるもんだ。こうも密集した人の群れによる作用と反作用の中では、さまざまな出来事のあらゆる組み合わせが起こりうる。そして、犯罪性とは無縁ながらも、突飛な小事が無数に姿をあらわすんだ。ぼくらはそういう事件もすでに経験してきた」
「そうだね。ぼくが記録に加えた最近の6事件も、3つはまったく法律に触れていなかったな」
「まったくだ。それで思い出したよ。アイリーン・アドラー文書。ミス・メアリ・サザーランドの奇妙な事件。唇のねじれた男の冒険、か。そう、この小さな事件が同じカテゴリーに収まるのは間違いないな。守衛のピータースンを知っているね?」
「ああ」
「これはピータースンの戦利品だよ」
「ピータースンの帽子だったのか」
「違う、違う、拾ったんだ。所有者は不明。使い古しの山高帽としてではなく、知的な問題として見てもらいたいな。では最初にこれがどうやってここにきたのかを。こいつはクリスマスの朝にやってきた。立派な太った鵞鳥と一緒にね。鵞鳥の方は、間違いなく、いまこの瞬間にピータースン家の暖炉であぶられている。事実はこうだ。クリスマスの朝4時ごろ、ピータースンという、知ってのとおり、きわめて誠実な人物が、ささやかなお祭り騒ぎからの帰り道、トテナム・コート街を通った。前方を見ると、ガス灯に照らされて、背の高い男が、白い鵞鳥を肩にぶらさげ、よろめきながら歩いている。グッジ街の角の…

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