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文化学院の設立について
ぶんかがくいんのせつりつについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「与謝野晶子評論集」 岩波文庫、岩波書店
1985(昭和60)年8月16日
初出「太陽」1921(大正10)年1月
入力者Nana ohbe
校正者門田裕志
公開 / 更新2002-06-10 / 2014-09-17
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は近く今年の四月から、女子教育に対して、友人と共にみずから一つの実行に当ろうと決心しました。これは申すまでもなく、私にとって余りに突発的なことであり、また余りに大胆なことでもありますが、しかし私には、従来の私の生活と同じく極めて真剣な事業であって、短時日の間ながら、十分慎重に、考えられるだけのことは考えて決心したつもりです。軽率な思立ちでないということだけは断言が出来ます。
 私はこの事の経過を簡単に書き、また私たちがこの事業に対する計画の摘要をも添えて置こうと思います。

       *

 私はこの両三年、個人と社会との如何なる問題を考えて見ても、必ず一応は経済問題に触れ、更に徹底しては人格問題に触れて已むことを見ました。日本人の振わないのは、要するに人格の精錬が不足しているからだということに帰して行くのです。これがために私は機会のあるたびに教育の改造を述べて、人間性の教育を社会に相談しました。そうして、自分の子女に対する外には教育の経験を持たない私が、自ら揣らずして、実際の教育に少しばかり関係して見ても好いという衝動をいつの間にか心の隅に感じているのでした。私が実際の教育というのは、男女共学制の下に試みる、中学程度から大学程度までの新しい特別の自由教育をいうのです。しかしそんな事が私自身の上に実現されようとは考えてもいなかったのですが、意外にも茲にその機会が参りました。
 西村伊作氏といえば、去年以来社会に愛読された『楽しき住家』の著者として、特にその名を知られていますが、氏は稀に見る多能な人で、画家、建築家、工芸美術家、詩人であると共に、更に熱心な文化生活の研究家であることは、友人のひとしく認めて驚いている所です。この西村氏が、日本人の生活を各方面から芸術的に改造する一つの小さな研究機関として、「芸術生活、西村研究所」を作ろうとする計画は去年の春以来のことで、その事は既に新聞紙に由って誇大に吹聴されたこともありましたが、西村氏は、その研究所の一部の事業として、先ず芸術的な自由教育の学校を興す決心をされたのです。
 西村氏からこの事の相談を最初に受けたのは石井柏亭氏と私とでした。画家である石井氏、詩人である私、この二人に対して、西村氏はその学校の実際の責任者となることを求められたのでした。私たちがそういう教育の重任に就くということは、言うまでもなく、社会の常識から見て突飛であるでしょう。西村氏はそれほど思い切った教育上の改革意見を齎らして私たちを驚かされたのでした。この事は私たちにも突然でしたが、石井氏にも私にも久しい間の親友である西村氏から相談を受けて見ると、三人が、一般の教育について、朧気ながら持っている平生の意見が期せずして一致し、話せば話すほど、実行方法の細部にわたる点までが同感であるのを発見しました。それで石井氏も快く進んでこの重任を引…

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