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果して女の虚栄心が全部の原因か?
はたしておんなのきょえいしんがぜんぶのげんいんか?
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十七巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日
初出「東京日日新聞」1936(昭和11)年11月28日号
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2003-12-03 / 2014-09-18
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 夫人の虚栄心から出入りの軍需工業会社員から金銭を収受し、ついに夫の地位と名誉にまで累を及ぼした植村中将の事件についていって見たい。

 こういう事件はやはり昨今の一部にかたよった景気につれて起った事でしょう、まだ一般の間に示されない、大なり小なりの同じような事実がないとはいえないという事は想像できます。
 ただこの場合、当事者の夫人の虚栄心が災いを引き起したという事が主として強調されていますが、私ども女にとっては、何か合点の行くような行かないような気がします。
 女の虚栄心ということは、昔から一つの通俗的な世間道徳の戒めとなっており、犯罪の裏には女ありなどといわれますが、この夫人の派手ずきな気質を助長させ、またそれを可能ならしめるような周囲の事情というものが、大きい結果を生んだのだということも忘れてはなりますまい。
 常識的に見ると、こういう複雑な場合では、この周囲の社会的事情そのものの中にある原因を十分探究摘発すべきであって、たまたま派手ずきで目立っていた一婦人の虚栄心という所にのみ、その責任の大部分を塗りつけるのは無理です、何か弱いものいじめのような気がします。
〔一九三六年十一月〕



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