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あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)
あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいじゅうごかん)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十八巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日
初出「宮本百合子選集 第十五巻」安芸書房、1949(昭和24)年10月
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2004-04-19 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ここには、一九三二年の一月の創刊で、日本プロレタリア文化連盟から出版されていた『働く婦人』に書いた短いものからはじまって、一九四一年(太平洋戦争のはじまった年)の一月執筆禁止をうけるまで婦人のために書いた感想、評論、伝記、書評など四十篇が集められている。一九三二年から四〇年いっぱいといえば八年の年月だが、その間には一九三八年(昭和十三年)から翌年の初夏までつづいた作品の発表禁止の期間がはさまり、通算六百日ばかりの拘禁生活の期間がある。ここに集められている評論、伝記は主として一九三七年(昭和十二年)一九三九、四〇年にかかれたものが多い。
 こんにち、日本の人民生活全体のおかれている悪条件は、もっともきびしい形で女性の生活に反映している。しかも、苦しいことは、若い少女の感情を不安定にし、荒びさせている社会悪の諸条件は、家庭の妻に、働く婦人のすべてに、未亡人をふくむすべての母の生活に深刻に作用していて、きょうの日本の女性の問題を現象的におっかけて見ても、ほとんどそれとしては解決のめどもないように思えることである。人民生活のごまかしようのない逼迫は、あらゆる女性の問題を、むき出しに社会問題として、半封建の特権者によって行われているファシズムへの傾きをもつきょうの政治の破綻としてわたしたちの毎日にほこさきを出しているのである。女性の風俗、モードの問題ひとつをまじめにとりあげても、こんにちではそこに、日本の流行が植民地的な文化趣味に従属させられてはならないという課題が立ちあらわれる。同時に、日本の独自性というものが一般の関心をひいている現在を利用してふたたび、超国家主義的な感情へ、戦争準備的な方向で「日本」を復活させようとするファシズムの明らかな意図と、しっかりたたかわなければならないという必要がおこっている。戦争によってこれだけ深い犠牲をはらった全日本の女性の、将来の戦争と再びはびころうとしているファシズムへのつよい反対がないならば、女性の苦痛にみちたきょうの生活そのものが打開されてゆく道はまったくないのである。
 婦人に向けられる失業や、女子学生のアルバイトの問題。職業と家庭生活との矛盾の問題。最悪な人民経済の事情から女性は家庭からどしどしはたき出されているのに、生活を求めて女性がたたかってゆく社会では、昔ながらの封建性が克服されていないばかりか、数年前には知られなかった複雑微妙な堕落のモメントが、女性の一歩一歩に用意されてある。
 戦争の時代にかかれた婦人についての評論や感想は、時間的にいって、自然きょうのそれらの諸現象にはふれていない。軍部の煽動にのって若い女性が、明日にかくされている生活の破滅に向ってヒロイズムでごまかされないように、戦争的美名にかくされた資本主義の搾取の現実を見とおすように、荒くれたかぶった世間の気風のうちに、ひとすじの人間らしさと、その発…

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