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明治大正美人追憶
めいじたいしょうびじんついおく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「新編 近代美人伝 (上)」 岩波文庫、岩波書店
1985(昭和60)年11月18日
初出「太陽 明治大正の文化特別号」1927(昭和2)年6月15日
入力者門田裕志
校正者川山隆
公開 / 更新2007-11-13 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 最近三、五年、モダーンという言葉の流行は、すべてを風靡しつくして、ことに美女の容姿に、心に、そのモダンぶりはすさまじい勢いである。で、美女の評価が覆えされた感があるが、今日のモダンガールぶりは、まだすこしも洗練を経ていない。強烈な刺戟は要するにまだ未熟で、芸術的であり得ないきらいがある。つねに流行は、そうしたものだといえばそれまでだが、デパートメントの色彩で、彼女らはけばけばしい一種のデコレーションにすぎない。
 さて振りかえって過ぎ越しかたを見る。そこにはいつも、一色の時代の扮飾はある。均一の品の多いのは、いつの世とてかわりはないが、さすがに残されるほどのものには、各階級を支配し、代表した美がある。尤も現代の理想は、差別を廃し、平等となる精神にある。とはいえ、根本は一つでありながら、美と善とは両立せねばならぬ。そして生れながらにして、美を心に、姿に授けられたものは、砂礫のなかのダイヤモンド、生るにけわしき世の、命の源泉として、人生を幸福にするものといえる。
 かつて、「現代女性の美の特質」とて、大正美人を記した中に、あまりに世の中の美人観が変ったとて、「現代は驚異である」とわたしは言っている。現代では、度外れということや、突飛ということが辞典から取消されて、どんなこともあたりまえのこととなってしまった、実に「驚異」横行の時代であり、爆発の時代である。各自の心のうちには空さえも飛び得るという自信をもちもする。まして最近、檻を蹴破り、桎梏をかなぐりすてた女性は、当然ある昂りを胸に抱く、それゆえ、古い意味の(調和)古い意味の(諧音)それらの一切は考えなくともよしとし、(不調和)のうちに調和を示し、音楽を夾雑音のうちに聴くことを得意とする。女性の胸に燃えつつある自由思想は、(化粧)(服装)(装身)という方面の伝統を蹴り去り、外形的に(破壊)と(解放)とを宣告し、ととのわない複雑、出来そくなった変化、メチャメチャな混乱、――いかにも時代にふさわしい異色を示している――と語っている。
 その時代精神の中枢は自由であった。束縛は敵であり、跳躍は味方だった。各自の気分によって女性はおつくりをしだした。美の形式はあらゆる種類のものが認識され、その奔放な心持ちは、ゆきつくところを知らずにいまもなお混沌としてつづいている。
 この混沌たる時代粧よ。
 改革の第一歩は勇気に根ざす、いかに馴化された美でも、古くなり気が抜けては、生気に充ちた時代の気分とは合わなくなってしまう。混沌たる中から新様式の美は発しる。やがて、そこから、新日本の女性美は現わされ示されるであろう。

 古から美女は京都を主な生産地としていたが、このごろ年ごとに彼地へ行って見るが、美人には一人も逢わなかったといってよいほどであった。一世紀前位までは、たしかに、平安朝美女の名残りをとどめていたのであろうが、江戸の…

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