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農民自治の理論と実際
のうみんじちのりろんとじっさい
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「石川三四郎著作集第二巻」 青土社
1977(昭和52)年11月25日
入力者田中敬三
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-01-05 / 2014-09-18
長さの目安約 27 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

         一

 私の今から申し上げやうとすることは政談演説や労働運動の講演会といふ様なものではなくて、ごくじみな話であります。初に農民自治の理論を話して、次にその実際を話したいと思ひます。
 理論としては第一に自治といふことの意義、第二に支配制度、政治制度の不条理なこと、第三に土地と人類との関係、即ち自治は結局は土着生活であること、土着のない自治制度はないこと、土民生活こそ農民自治の生活であることを述べたいと思つてをります。実際としてはこの理論の実行方法とそれへの歩みを述べるために、第一社会的方法、第二個人的方法に分けてお話いたします。

         二

 地上の全生物は自治してをります。単に動物だけではなく植物もみな自治生活を営んで居ります。
 蟻は何万、何十万といふ程多数のものが自治協同の生活をしてをります。蟻の中には諸君も御存知のやうに戦争をするのもありますが、それでも自分たちの仲間の間では相互扶助的な美くしい生活をしてをります。春から夏へかけて一生懸命に働いて沢山の食糧を集め、冬越の用意をいたします。土の下に倉庫を造り、科学的方法で貯へて、必要に応じてそれを使ひます。お互の間には礼儀もあり規律もあり、その社会制度は立派なものであります。しかし他部落の者が襲撃して来た時などには勇敢に戦争をいたします。私はその戦争をみたことがあります。
 丁度フランスにゐた時のことであります。
 フランスの家はみな壁が厚くて二尺五寸位もあります。あの千尺も高い絶壁の様な上に私どもの村がありました。そこのある一軒の家に住つて百姓をしてをりました。その頃は忙しい時には朝から夜の十二時頃までも働いて居りました。ある夜、遅く室に帰つて来て床につきましたが、何だか気持がわるいので起きてランプをつけてみると大へん。十畳ばかりの室の半分は真黒になつて蟻が戦争をして居ります。盛んに噛み合つてゐる有様は身の毛がよだつばかりでした。蟻を追ひ出さうと思つてにんにくを刻んで撒いたがなか/\逃げない。翌日も戦ひ通してゐましたが、その噛み着いてゐる蟻の腹をつぶしてみても、決して離さないで、噛みつかれた方は其敵に噛みつかれた儘かけ廻つてゐた位であります。然しその翌朝になると戦がすんだと見えて、一匹残らず退いてしまひ、死骸もみんな奇麗に片づけてしまひました。蟻は支配のない社会生活を営み乍ら、協同一致して各自の社会の幸福と安寧をはかり、その危険に際しては実に勇敢に戦ひます。
 蜂の社会に支配者はありません。暖い日には一里も二里も遠く飛び廻り、足の毛に花粉をつけては持つてかへつて冬越の為に貯へます。かうして皆がよく働いて遊人といふものがありません。但し生殖蜂といふものがありますが、これは目的を達した後には死んでしまつて、後には労働蜂と雌蜂とだけが残ります。「働かざる者食ふべからず」といふ…

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