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思い
おもい
副題情報局の映画新体制案について
じょうほうきょくのえいがしんたいせいあんについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「新装版 伊丹万作全集1」 筑摩書房
1961(昭和36)年7月10日
初出「映画評論」1941(昭和16)年10月号
入力者鈴木厚司
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-08-25 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 寝台の上で、何を思いわずろうてみてもしようがないが、このたびの改革案が発表されたときは、やはり強くなぐられたような気がした。自分一個の不安もさることながら、それよりもまず、失業群としての、大勢の映画人の姿が、黒い集団となつてぐんと胸にきた。痛く、そしてせつない感情であつた。しかし寝ていてはどうしようもない。もつとも起きていても、たいしてしようはないかもしれぬが、一人でも犠牲者を少なくしてもらうよう、方々へ頼んでまわるくらいのことならできる。ただし、私が頼んでまわつたとてあまり効果はないかもしれないが、それでも寝たまま考えているよりはいくらかましであろう。
 最初改革の基本案が発表せられてから、もう二週間以上にもなるかと思うが、いまだに成案の眼鼻がつかず、それ以来やすみつきりの撮影所もある。何も好んで休んでいるわけではないが、提出するどのシナリオも許可されないため、仕事のしようがないのだそうである。この許可されないシナリオの中に、どうやら私の書いたものもまじつているらしいので、これは何とも申しわけない話だと思つている。
 実行案の成立が、いつまでも実現しない理由は、各社の代表が、互に自社の利益を擁護する立場を脱しきれないためと、いま一つには当局の態度がいささか傍観的にすぎるためらしい。
 各社代表が、利益から離れられないのは、むしろ当然すぎることであつて、少しもこれを怪しむ理由はない。彼らは一人々々切り離して観察すれば、おそらくいずれも国民常識ゆたかな紳士なることを疑わないが、一度、会社の代表たる位置に立たんか、たちまち利益打算の権化となるであろうことは決して想像に難くない。彼らの背には、多くの重役、株主、会社員がおり、しかも、彼らの代表する会社はもともと利益を唯一の目的として成立したものであつてみれば、彼らが利益を度外視して、真に虚心坦懐に事をはかるというようなことは、実際問題として期待し得べきことかどうか、はなはだ疑なきを得ない。
 しかしすでに事がここまできた以上、これ以上荏苒日を虚しうすることはできないから、このうえは官庁側においてもいま一歩積極的に出て、業者とともに悩み、ともにはかり、具体的な解決策を見出すだけの努力と親切とを示してもらいたい。あるいはすでに実行案があるならば、一刻も早く、それを提示して指導の実をあげてもらいたい。
 事変以来、官庁側の民間に対する指導方式の中には、「禁止しないが、自発的に取りやめろ」とか、「方法はそちらで考えろ」とかいう持つて廻つた表現がとみに多くなつた。これはおそらくあたうかぎり民間との摩擦を少なくするための心づかいだろうとは察せられるが、しかし、民間の側からいえば、このような表現の中にかえつて何か怜悧すぎる、親しみにくいものを感じ取つているのではないかと思う。
 もつと専制的でもいい、もつと独裁的でもいいから、…

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