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女流俳句を味読す
じょりゅうはいくをみどくす
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「杉田久女随筆集」 講談社
2003(平成15)年6月10日
初出「花衣 創刊号」1932(昭和7)年3月
入力者杉田弘晃
校正者noriko saito
公開 / 更新2006-05-06 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 本も沢山よまず何の学問もない私が、句評をするという事の僭越さは自分でもよく知っているが、之はただ私の勉強の為め、小倉の女流達の為め、何の理屈もなく味い感じ、学ぶ心持ちに他ならぬ。其点大方の寛恕を乞い私の味読のしかたに誤あらばドシドシ御教示仰ぎたい。

独楽もつて子等上がりくる落葉寺  立子
独楽二つぶつかり離れ落葉中  同
あばれ独楽やがて静まる落葉かな  同
赤き独楽まはり澄みたる落葉かな  同
落葉中二つの独楽のよくまはる  同

 落葉に独楽を配せる連作である。第一句では、落葉が散りしき、詣でる人も少ないという様な木深い寂びた寺の境内を背景とし、そこへ独楽をもって上ってくる童たちを賑わしく登場させている。此第一句は此連作のコンポジションとも言うべきもの。
 第二句では落葉の大地を切りとって、二つの独楽がはっしと投げ出され、地上に輪をえがいては互に近づきぶつかりあい飛び離れしてつくる処もなく廻っている緊張した光景を写生している。句の表には二つの独楽丈がよまれているが、其周囲に嬉々と手をうち、けしかけている童べらの姿も何となく聯想させられる。
 第三句では、あばれ独楽という大胆直明な言葉で、落葉を蹴らしつつ奔放に廻り狂い、やがて速度をゆるめて落葉の中に静止して仕舞う迄の動作が写されている。
 第四句に至ると、赤い美しい独楽がただ一つ。くすんだ落葉の大地に、きりきりと鮮かな旋律をもてまわり澄みつつあるというので、五句中一番此句が熱もあり、赤き独楽という言葉もまわりすみたるという表現も印象的で、作者の高潮した感興も窺われる。
 第五句目は此連作としては、平坦である丈にやや弱い感じが有りはしないだろうか。
 此連作落葉という消極的なものに、活動性の独楽を配してほうふつとさせる近代写生の的確さ、中七字にえがきわけられた各々の独楽の活動的な見方、あらわし方に学ぶべき点があると思う。

鶴一羽高歩みして春の水  あふひ

 鶴の沢山すむという南国阿久根の里でもよし、ひろやかな、木深い幽苑を想像してもよい。一羽の鶴が春水をしずかにうごかしつつ一歩毎に足を高くぬいては佇み、又おもむろに歩む。水輪のかげがなごやかにあたりのものに揺れうつるという様な景であろう。
 立子さんの独楽の句にみる如き溌溂としたものはないが、気品の高い鷹揚な鶴の姿も、春水の感じとよく調和して、おおらかな老巧な句風である。

青簾くらきをこのみ住ひけり  多佳女

 大阪も住吉あたりの、青簾をかけわたしたほのぐらい家の内を、ものなつかしくも思いつつ趣味びたりで住んでいる佳人をえがいてごらんなさい。光源氏の君ならずとも、つい垣ま見たくもなるであろう。
 小倉でそだった多佳女さん。白牡丹か桜のような此婦人に、青簾のくらきをこのむ心境のふかさと落付きを見出しえた事は嬉しい。

陽炎のまつはる足を運びけり  …

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