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蛇いちご
へびいちご
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本児童文学大系 第一一巻」 ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日
入力者tatsuki
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2005-09-17 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 林の中に行つてみると、紅のいろをした美しい蛇いちごが生つてをります。
「蛇いちごを食べてはいけないよ。あれは毒ですからね。あれを食べると、体は溶けて水になつてしまひますよ。」
 お母さん達はかう子供に教へます。恐しい毒な蛇いちご、みかけは大変美しくて、人の体をとかしてしまふ蛇いちご。本当にさうなんでせうか? 私は知りません。けれどもこんな話がつたはつてをるのです。

 日本のずうつと西の端の或国では、氏神といつて、どこの家でも、先祖代々自分だけの神様を祀つてをります。その祭礼は十一月で、一年に一度神職をよんで、神棚に七五三繩を張り、御燈明をつけて、祝詞をあげて貰ひます。そして親類の者や、近所の人達を呼んで御馳走を致します。子供達は甘酒や御赤飯がふるまはれるので、氏神祭りといへば、楽しいものゝ一つです。
 ある時、一人の神主さんがありました。矢張りこのお祀りによばれて方々を祝詞を上げて歩いてをりました。ところが、よばれて行つた先で出す御礼は玄米一升に、一厘銭十三ときまつてをりました。至つて僅かなものです。けれども御馳走だけはうんと出ますが、一人で一日四五軒も行くのですから、とても出された御馳走をみんな食べるわけにはいきません、といつて持つて帰ることも出来ないので、大変残念に思つてをりました。
「どうにかして、皆でなくても、出されたものを大てい喰べつちまうことはできないかしら?」
 ぼんやりと考へながら、或日神主は、谷の傍の山道をうろ/\としてゐますと、一疋の大蛇が向うへ出てきましたので、びつくりして、そこの岩陰にかくれてをりますと、大蛇は神主のゐることを知らないものゝやうに、大きなお腹をかゝへて、だるさうにして、谷のふちの辺を何やら捜してをりました。神主さんは恐いけれど、何をするのだらうと、不思議がつて見てをりますと、大蛇はそこにあつたものを何やら二口三口たべて谷へ下りて行きました。神主さんがそつと覗いてみると、大蛇は谷川に下りて行つて、水を飲んでゐるのでした。水を飲み終ると、大蛇は向うの岸に上り、大きな松樹に身を巻きつけ、一つじつと締めると、見る見るうちにお腹はげつそりと小さくなつて、勢よくどこかへ行つてしまひました。
 神主さんは岩の陰を出て、蛇が何やら喰べたところへ行つてみますと、そこには美しい蛇いちごが、もう霜にしなびて残つてゐました。神主さんは「しめた。」と、手を拍つて悦びました。それはかういふ話を思ひ出したからでした――
「蛇が腹一ぱいに物を食べると、蛇いちごを食べ、水を飲んで、立木に巻きつく。さうするとお腹の物はすつかりと消化れてしまふ。けれども亀を呑んだときだけにはそれがきかないさうだ。どういふわけかといふと、亀は堅い甲羅を着てゐるから、蛇いちごもきかない。亀は呑まれる直ぐ、首も手足もちゞこめてゐるが、蛇が水を呑むと、元気が出て、お腹の中で、…

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