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多神教
たしんきょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海神別荘 他二篇」 岩波文庫、岩波書店
1994(平成6)年4月18日
初出「文藝春秋」1927(昭和2)年3月
入力者門田裕志
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-05-03 / 2014-09-21
長さの目安約 37 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

場所  美濃、三河の国境。山中の社――奥の院。
名   白寮権現、媛神。(はたち余に見ゆ)神職。(榛貞臣。修験の出)禰宜。(布気田五郎次)老いたる禰宜。雑役の仕丁。(棚村久内)二十五座の太鼓の男。〆太鼓の男。笛の男。おかめの面の男。道化の面の男。般若の面の男。後見一人。お沢。(或男の妾、二十五、六)天狗。(丁々坊)巫女。(五十ばかり)道成寺の白拍子に扮したる俳優。一ツ目小僧の童男童女。村の児五、六人。
[#改ページ]

禰宜 (略装にて)いや、これこれ(中啓を挙げて、二十五座の一連に呼掛く)大分日もかげって参った。いずれも一休みさっしゃるが可いぞ。
この言葉のうち、神楽の面々、踊の手を休め、従って囃子静まる。一連皆素朴なる山家人、装束をつけず、面のみなり。――落葉散りしき、尾花むら生いたる中に、道化の面、おかめ、般若など、居ならび、立添い、意味なき身ぶりをしたるを留む。おのおのその面をはずす、年は三十より四十ばかり。後見最も年配なり。

後見 こりゃ、へい、……神ぬし様。
道化の面の男 お喧しいこんでござりますよ。
〆太鼓の男 稽古中のお神楽で、へい、囃子ばかりでも、大抵村方は浮かれ上っておりますだに、面や装束をつけましては、媼、媽々までも、仕事稼ぎは、へい、手につきましねえ。
笛の男 明後日げいから、お社の御祭礼で、羽目さはずいて遊びますだで、刈入時の日は短え、それでは気の毒と存じまして、はあ、これへ出合いましたでごぜえますがな。
般若の面の男 見よう見真似の、から猿踊りで、はい、一向にこれ、馴れませぬものだでな、ちょっくらばかり面をつけて見ます了見の処。……根からお麁末な御馳走を、とろろも[#挿絵]も打ちまけました。ついお囃子に浮かれ出いて、お社の神様、さぞお見苦しい事でがんしょとな、はい、はい。
禰宜 ああ、いやいや、さような斟酌には決して及ばぬ。料理方が摺鉢俎板を引くりかえしたとは違うでの、催ものの楽屋はまた一興じゃよ。時に日もかげって参ったし、大分寒うもなって来た。――おお沢山な赤蜻蛉じゃ、このちらちらむらむらと飛散る処へ薄日の射すのが、……あれから見ると、近間ではあるが、もみじに雨の降るように、こう薄りと光ってな、夕日に時雨が来た風情じゃ。朝夕存じながら、さても、しんしんと森は深い。(樹立を仰いで)いずれも濡れよう、すぐにまた晴の役者衆じゃ。些と休まっしゃれ。御酒のお流れを一つ進じよう。神職のことづけじゃ、一所に、あれへ参られい。
後見 なあよ。
太鼓の男 おおよ。(言交す。)
道化の面の男 かえっておぞうさとは思うけんどが。
笛の男 されば。
おかめの面の男 御挨拶べい、かたがただで。(いずれも面を、楽しげに、あるいは背、あるいは胸にかけたるまま。)
後見 はい、お供して参りますで。
禰宜 さあさあ、これ。――いや、小児衆――(渠ら幼きが女の児…

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