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二千六百年史抄
にせんろっぴゃくねんししょう
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「菊池寛全集 第十八巻」 高松市菊池寛記念館、文藝春秋
1995(平成7)年4月15日
入力者kamille
校正者成宮佐知子
公開 / 更新2013-02-05 / 2014-09-16
長さの目安約 115 ページ(500字/頁で計算)
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本文より



 今年の初、内閣情報部から発行してゐる「週報」から、最も簡単な日本歴史を書いてくれとの註文を受けた。多くの史学者に頼まず、僕を選んだのは、なるべく大衆に読ませようとの意図からであらう。
 僕は、史学者でもない、歴史研究者でもない。しかし、歴史を愛し、歴史上の諸人物に親しみを持つ点に於ては、多く人後に落ちないつもりである。殊に、僕個人として、二千六百年を記念する意味で、「新日本外史」といふ小著を執筆中であつたので、「週報」からの依頼も、喜んで引き受けたのである。
 悠々たる二千六百年間の出来事を原稿紙にして、わづか百五六十枚で、まとめることは至難中の至難である。しかし、僕が素人であればこそ、さう云ふ大胆な仕事も、出来るのではないかと思つてゐる。
 この「二千六百年史抄」の本願とするところも、勿論国体を明徴にし、日本精神を発揚するところにありと思つたから、その点に微力を尽くしたつもりである。
 が、何にせよ、片々たる小冊子である。説いて尽さゞる所が、甚だ多いのである。読者の中、不満を感ずる方があつたならば、どうかこれを機会として、他の史書を広く渉猟して下さらば、欣懐この上もないのである。日本歴史の智識を充分に持つことは、日本人としての自覚を持つ上に、最も大切なことではないかと思つてゐる。
昭和十五年七月廿八日
[#改段]

神武天皇の御創業

 皇孫彦火瓊瓊杵尊が、天照大神の神勅を奉じ、日向の高千穂の[#挿絵]触ノ峰に降臨されてから御三代の間は、九州の南方に在つて、国土を経営し、民力の涵養を図ると共に、周囲の者どもを帰服せしめ、之を化育することに依つて、いよ/\興隆の基礎を築かれたのである。
 神武天皇の御世には、その皇化は九州一円に及んで、皇祖の神勅のまに/\大八洲を経営すべき自信と力とを獲得されたのであらう。
 天皇は、御年十五歳にして、皇太子となられたが、御年四十五歳の時に、
「遼[#挿絵]之地、猶未だ王沢に霑はず、遂に邑に君有り、村に長有り、各自彊を分ちて、用て相凌※[#「足へん+樂」、U+8E92、266-上-15]ふ。抑又塩土老翁に聞きしに曰く、東に美地有り、青山四周、……余謂ふに、彼地は必ず当に以て天業を恢弘て天下に光宅るに足りぬべし、蓋し六合の中心か。……何ぞ就きて都らざらむや。」
 と、諸皇兄及び諸皇子に計り給うた。
 諸皇族諸臣達、悉く賛同し奉つた。即ち、舟師を率ゐて、東方へ御進発になつた。
 これは、御東征と云ふよりも、東方への御発展とも云ふべきで、わが大和民族が、理想の大業へと未知の国土へと、敢然たる大行進を為したことを意味するのだと思ふ。
 日向を出発して、大和に達せられる迄、古事記に依れば十数年、日本書紀に依れば、六年の歳月が経つてゐる。これは、古事記の方が実際に近いのではあるまいか。当時は完全なる船があるわけでないから、沿岸づ…

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