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「琉球の宗教」の中の一つの正誤
「りゅうきゅうのしゅうきょう」のなかのひとつのせいご
作品ID46323
著者折口 信夫
文字遣い新字旧仮名
底本 「折口信夫全集 3」 中央公論社
1995(平成7)年4月10日
初出「民俗学 第一巻第一号」1929(昭和4)年7月
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2007-05-11 / 2014-09-21
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

沖縄に於ける私の最信頼する友人は、学問や人格や、いろ/\な点から別々であるが、第一は、伊波普猷さんであり、その余にはまづ四人が浮ぶ。島袋源一郎さん・川平朝令さん、それから亡くなつた麦門冬末吉安恭さん・仲吉朝助翁である。今度、長年書きためた短文を集めて出したについて、これ等の方々の助力を思ひ出す種が多い。実は、その中の「続琉球神道記」といふのは、以前「世界聖典全集」に書いた「沖縄の宗教」その儘にしておいた。此は二度の務めを、昔、国頭郡大宜味村喜如加の小学教員をして居て、私の国頭廻りに、引きまはしの労をとつて下された、島袋教諭の心入れに酬ゆる為、少し前に、ほんの数行手を入れたまゝで、校正も人任せで、郷土研究社の「山原の土俗」と言ふ、同教諭の採訪録の解説として、加へておいた。其をそのまゝ、所謂げら刷りとやらを、せき立てられて、大岡山の書物の原稿に渡した為、読み返す間がなかつた。ところがやつぱり、大しくじりの予感が具体化した。久高島で、川平さんと私との採訪して来た「ゐなぐめがなさば君のめで、ゐきがみがなさばしゆんぢやなしめで」といふ琉歌形の民謡について早く「琉球の宗教」時分に、伊波さんその他から、心切な注意を受けてゐたのであつた。其を同書のぬき刷りに書き込んで、安心してゐたが、全集本の方に書き入れずにゐた。解説のげら刷りの原本になつたのは、その本の方から、源七つあんの写してくれたものであつた。
そのまゝ失念してゐたが、本になつてから、しまうたと思うた。
首里主愛で、君の愛で
となつてゐる点である。
早速、小石川の伊波さんから、二度目に、国頭名護の源一郎さんから、心切な教示が来た。処が伊波さんの以前の手紙は、今見つからない。新しい源一郎さんのお手紙を出して貰うて、横着ながら、「よりあひ話」の責めを塞して頂かうと思ふ。

御新著拝見、右の八十四頁、久高島の結婚の時に、合唱する謡の意義につき、鄙見申し述べ候。
女神殿は君のめでい
男神は首里殿めでい
新婦なる女神(この女)は、君即、聞得大君の御奉公。新郎なる男神(男)は、首里天加那志即、国王の御奉公、との意に御座候。古歌に、「首里がなし御奉公夜昼もしやべんあまん世のしのぐ御免めしよわれ」おもろさうしにも、第二十二に、「みおやだいりおもろ双紙」とあり。公事おもろの事に候。
めでいは近代語にて、古くは、みおやだいり。御奉公の意にて、現在も、公事又は公務のことを、沖縄にては、ゑえでえと申し居り、曩のみおやだいりのみは、敬語にて、おやだいりを約して、おやだいといひ、更に転訛して、ゑえでえと発音致し候。猶申す迄もなく、こゝに国王即、首里加那志の御奉公を先にいひ、次に聞得大君の御奉公を謡ふべきが今日の順序なるに、君の御奉公を先に謡ひ、国王を次に謡へるは、注目すべき事にて、女人政治又は、聞得大君が、国王の上位にある感情を、表し居るものと…

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