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まげ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「青眉抄・青眉抄拾遺」 講談社
1976(昭和51)年11月10日
入力者鈴木厚司
校正者川山隆
公開 / 更新2007-06-06 / 2014-09-21
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ちいさい頃から、いろいろの髷を考案して近所の幼友達にそれを結ってあげ、ともにたのしんだのがこうじて、年がつもるにしたがって女の髷というものに興味を深くもつようになった。
 ひとつは私の画題の十中の八、九までが美人画であったために、女と髷の不可分の関係にあった故でもあろう――髷については、画を描く苦心と平行して、それを調べていったものである。

 私自身は二十歳すぎから櫛巻のぐるぐるまきにして今まで来ているのを想うと、自分の髪はたなへあげて置いて、ひとの髷となるとけんめいになって研究する――考えてみるとおかしな話である。
 しかし、これも自分の仕事と切り離すことの出来ないものなので、折りにふれ時にふれ、それを調べているうちに、ずいぶんとたくさんの髷のかたちが私の脳中に陣取ってしまった。
 いまそれを一つずつ想い出すままにとり出して並べてみるのも何かの役に立てばと考えるので……

 髷の名称も時代によって、その呼びかたがいろいろと変っているが、明治の初期あたりから、明治の末期まで結われたものの名前だけでも、たいへんな種類があり、それが関東と関西では、また別々であるので、髷の名称ほど種々雑多なものはない。
 結綿、割唐子、めおと髷、唐人髷、蝶々、文金高島田、島田崩し、投島田、奴島田、天神ふくら雀、おたらい、銀杏返し、長船、おばこ、兵庫、勝山丸髷、三つ輪、芸妓結、茶筌、達磨返し、しゃこ、切髪、芸子髷、かつら下、久米三髷、新橋形丸髷。
 これは関東――といっても主に東京での髷であるが、関西になると、髷の名前ひとつにしても、いかにも関西らしい味をみせた名前をつけている。

 ところで関西といっても京都と大阪とでは名前がころりと変っている。
 大阪には大阪らしい名前、京都には京都らしい呼び名をつけているところに、その都市都市の好みがうかがえて面白い。
 達磨返し、しゃこ結び、世帯おぼこ、三ツ葉蝶、新蝶大形鹿子、新蝶流形、新蝶平形、じれった結び、三ツ髷、束ね鴨脚、櫛巻、鹿子、娘島田、町方丸髷、賠蝶流形、賠蝶丸形、竹の節。
 大阪人のつけそうな名前である。「じれった結び」とか、「世帯おぼこ」などというのは如何にも気のせかせかした、また世帯というものに重きを置いている都会生活者のつけそうな名前で、髷の形を知らぬものでも名前をきいただけで、その形が目に浮かんで来るようである。
 京都へくると、また京都らしい情緒をその名称の中にたたえていて嬉しい。
 丸髷、つぶし島田、先笄、勝山、両手、蝶々、三ツ輪、ふく髷、かけ下し、切天神、割しのぶ、割鹿子、唐団扇、結綿、鹿子天神、四ツ目崩し、松葉蝶々、あきさ、桃割れ、立兵庫、横兵庫、おしどり(雄)と(めす)とあり、まったく賑やかなことであって、いちいち名前を覚えるだけでも、大変な苦労である。
 そのほかに、派生的に生まれたものに次のようなもの…

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