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二つの鞄
ふたつのかばん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「夢野久作全集7」 三一書房
1970(昭和45)年1月31日
初出「九州日報」1923(大正12)年11月20日
入力者川山隆
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-08-08 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 小さな鞄と大きな鞄と二つ店に並んでおりました。大きな鞄はいつも小さな鞄を馬鹿にして、
「お前なんぞはおれの口の中に入ってしまう」
 と冷かしました。
 二つの鞄は同じ時に同じ人に買われて、同じ家に行きました。すると小さな鞄の中にはお金や何か貴いものが詰められて、人間に大切に抱えられて行きます。大きな鞄はあべこべにつまらないものばかり詰められて、荷車に積まれたり投げ飛ばされたりしておりました。小さな鞄は大威張りで、
「大きな鞄の意気地なし」
 と笑っておりました。大きな鞄は大層口惜しがって、自分をいじめる人間を怨んでおりました。
 ある日大火事があってこの家の人が逃げ出す時、衣服と一緒に小さな鞄を大きな鞄の中に入れて逃げ出しました。大きな鞄はここで敵を取ってやろうと思って、火事が済んだあとで人が開けようとすると、口をしっかりと閉じて中の小さな鞄を出すまいとしました。人間は大層困っていろいろやってみましたが、どうしても開きません。
「この鞄は駄目だよ。口を開かなきゃ鞄の役に立ちはしない。中の小さな鞄が入り用だからしかたがない。こうしてやろう」
 と言いながら横腹を切り破ってしまいました。



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