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一年生たちとひよめ
いちねんせいたちとひよめ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」 てのり文庫、大日本図書
1988(昭和63)年7月8日
入力者めいこ
校正者もりみつじゅんじ、鈴木厚司
公開 / 更新2003-11-04 / 2014-09-18
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 学校へいくとちゅうに、大きな池がありました。
 一年生たちが、朝そこを通りかかりました。
 池の中にはひよめが五六っぱ、黒くうかんでおりました。
 それをみると一年生たちは、いつものように声をそろえて、

 ひイよめ、
 ひよめ、
 だんごやアるに
 くウぐウれッ、

とうたいました。
 するとひよめは頭からぷくりと水のなかにもぐりました。だんごがもらえるのをよろこんでいるようにみえました。
 けれど一年生たちは、ひよめにだんごをやりませんでした。学校へゆくのにだんごなどもっている子はありません。
 一年生たちは、それから学校にきました。
 学校では先生が教えました。
「みなさん、うそをついてはなりません。うそをつくのはたいへんわるいことです。むかしの人は、うそをつくと死んでから赤鬼に、舌べろを釘ぬきでひっこぬかれるといったものです。うそをついてはなりません。さあ、わかった人は手をあげて。」
 みんなが手をあげました。みんなよくわかったからであります。
 さて学校がおわると、一年生たちはまた池のふちを通りかかったのでありました。
 ひよめはやはりおりました。一年生たちのかえりを待っていたかのように、水の上からこちらをみていました。

 ひイよめ、
 ひよめ、

と一年生たちは、いつものくせでうたいはじめました。
 しかし、そのあとをつづけてうたうものはありませんでした。「だんごやるに、くぐれ」とうたったら、それはうそをいったことになります。うそをいってはならない、と今日学校でおそわったばかりではありませんか。
 さて、どうしたものでしょう。
 このままいってしまうのもざんねんです。そしたらひよめのほうでも、さみしいと思うにちがいありません。
 そこでみんなは、こう歌いました。

 ひイよめ、
 ひよめ、
 だんご、やらないけれど、
 くウぐウれッ

 するとひよめは、やはりいせいよく、くるりと水をくぐったのであります。
 これで、わかりました。ひよめはいままで、だんごがほしいから、くぐったのではありません。一年生たちによびかけられるのがうれしいからくぐったのであります。



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