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我が円朝研究
わがえんちょうけんきゅう
副題「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
「かいだんぼたんどうろう」「えじまやそうどう」「かいだんちぶさえのき」「ぶんしちもっとい」「しんけいかさねがふち」について
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「小説 圓朝」 河出文庫、河出書房新社
2005(平成17)年7月20日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-01-29 / 2014-09-21
長さの目安約 78 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 三遊亭圓朝初期の作品たる「怪談牡丹燈籠」「鏡ヶ池操松影(江島屋騒動)」「真景累ヶ淵」並びに代表作「怪談乳房榎」「文七元結」の諸篇を検討してみよう。いわゆる欧化時代の横顔たる西洋人情噺の諸作については引き続いて世に問う『圓朝』後半生篇の附録に語ろう。「後開榛名梅ヶ香(安中草三郎)」や「粟田口霑笛竹」や「塩原多助一代記」もまた逸すべからざる代表作品であるがこれらの検討もまた他日を期そう。
 まず速記そのものについていいたい、冒頭に私は。
 ひと口に速記というもの、大方から演者の話風を偲ぶよしなしとされている。たしかにこれにも一理あってまことに速記は円盤と同じくかつて一度でもその人の話術に接したものにはいろいろの連想を走らせながら親しむこともでき、従って話風の如何なりしかをおもい返すよすがともなるのであるが、そうでない限り、話術のリズムや呼吸、緩急などは、絶対分らないといってよかろう。
 その代りその人の高座を知っているものに昔の速記はなかなかに愉しく、微笑ましかった。かりに「なか申しておりまして」というような口調の落語家ありとすれば、その通り速記もまた「なか申して」いたし、「客人何々を御存じか」などと風流志道軒の昔を今に大風な口の利き方の講釈師ありせば、これまた、速記も同じような大口利いていたからである。往年、私の愛読した『檜山実記――相馬大作』など「百猫伝」で知られた桃川如燕の速記だったとおぼえているが、開口一番、如燕自ら今日の講釈師の不勉強不熱心をさんざんにこき下ろして、さて本題に入っている。すでにここが今日のいやに整頓されてしまっている速記とちがっておもしろいが、さらに第何席目かの喋りだしにおいては「ここ二、三日、宿酔の気味で休みまして」と正直に断っている。何もそんなこといちいち断らずとも読者には分らないのであるが、それをハッキリと断り、速記者もまた克明にその通りを写して紹介しているところがいよいよおもしろい。好もしくもある。然るに――さらにさらに終席ちかくに至ると突然貞玉(?)とかいう人(のちの錦城齋典山だろうか、乞御示教)が突然代講していて、なんとこういっている。
「如燕先生は大酒が祟って没りました。で拠ん所なく今日からは私が……」云々。
 読んでいて私、ふっと瞼の熱くなってきたことを何としよう。もはやここまでくると『檜山実記』の是非善悪より、この速記をめぐって、ある人生の一断面のまざまざと見せられていることに何より私はこころ打たれずにはいられなかった。元よりこうした場合は異例ではあるが、話風の活写には間然たるところありとしても、多かれ少なかれ何か昔の速記にはこうしたありのままの浮世はなれた風情がある。また演者の生活や好みの一断片がチラと不用意に覗かれる、夏の夕風にひるがえった青簾の中の浴衣姿の佳人のごとく。そこを何より買いたいのである。
 こうした…

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