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五年後
ごねんご
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本の原爆文学1 原民喜」 ほるぷ出版
1983(昭和58)年8月1日
入力者ジェラスガイ
校正者大野晋
公開 / 更新2002-09-28 / 2014-09-17
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




竜ノ彫刻モ
高イ石段カラ割レテ
墜チ
石段ワキノ チョロチョロ水ヲ
ニンゲンハ来テハノム
炎天ノ溝ヤ樹ノ根ニ
黒クナッタママシンデイル
死骸ニトリマカレ
シンデユク ハヤサ
鳥居ノ下デ 火ノツイタヨウニ
ナキワメク真紅ナ女

 これは五年前のノートに書きなぐっておいたものである。
 五年前……。私はあの惨劇の翌日、東照宮の境内にたどりつき、そこで一昼夜をおくった。
 石段わきの木陰に、沸いて流れる水があって、私はときどき咽喉を潤したものだ。あの水のところには、絶えず誰かが来て、かがんでいたようだ。水を飲むためばかりでなく何となく、私の足はあの清水のところに向かうのだった。今でも……。満目惨たる記憶のなかで、あのささやかな水は何かを囁いていてくれるようだ。
 東照宮の鳥居の下で、反転していた火傷の娘、
 兵隊サン 助ケテ
 あの声が真紅だったのか、あの口が真紅だったのか……くらくらと頭上に空間がくずれ墜ちるようだ。



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