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経験派
けいけんは
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本織田作之助全集 第六巻」 文泉堂出版
1976(昭和51)年4月25日
入力者桃沢まり
校正者小林繁雄
公開 / 更新2009-10-07 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 彼は小説家だった。下手な小説家だった。その証拠に実感を尊重しすぎた。
 彼は掏摸の小説を構想した。が、どうも不安なので、掏摸の顔を見たさに、町へ出た。
 ところが、一人も掏摸らしい男に出会わなかった。すごすご帰りの電車に乗って、ふと気がつくと、財布がない。掏られていたのだ。彼は悲しむまえに喜んだ。
「これで掏摸の小説が書ける」
 彼は飛ぶように家へ帰った。そして机の前に坐ると、掏られたはずの財布がちゃんと、のっている。持って出るのをうっかり忘れていたのだ。
 彼は原稿用紙の第一行に書かれている「掏摸の話」という題を消して、おもむろに、
「あわて者」
 という題を書いた。そして、あわて者を主人公にした小説を書き出した。



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