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ホオムズの探偵法
ホオムズのたんていほう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕」 論創社
2003(平成15)年11月10日
初出「新青年 第七巻第三号新春増刊号・探偵小説傑作集」1926(大正15)年2月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-12-17 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

一 書斎の中のホームズ

 ベーカー・ストリートの古びた部屋、そとにはロンドン特有の濃霧がたちこめている。室内には青白い瓦斯ランプがついており、ストーブにはかっかっと石炭が燃えている。書棚にはあらゆる種類の専門書がぎっしりとつまっており、色々な薬品や試験管などと共に陶器や各種の金属でこしらえた世界各国の骨董品が並んでいる。その中には、印度の仏像や、支那の古器や、南洋土人の手工品や、アフリカの食人種の部落からとってきた頭蓋骨などもあるといった具合。
 ロンドン中の新聞はもとより、パリやニューヨークの新聞などがとりまぜて部屋中に散乱している。その中に、四十そこそこのがっしりした男が、パイプをくわえて、幾分にがみばしった顔つきをして座っている。そのそばには、主人公と同じくらいの年輩の紳士がすわって、二人で何か語りあっている。
 ちょっと見るとこの部屋の主人公は医者のようでもあり、人類学者か考古学者のようでもあり、探険家のようでもある。また肉体だけを見ると、スポーツマンか拳闘手のようにも見える。ところが、これが、だいたい私の想像する、名探偵シャーロック・ホームズのグリンプス〔一見、一瞥〕である。そばにすわっている紳士は言うまでもなく彼の友人であり助手であるワトソンである。

二 ホームズの性格

「すべての感情は、彼の、冷静な、明徹な、それでいて見事に調和のとれた心と相容れない。とりわけ恋愛という感情はなおさらである。私の見たところでは、彼は、全世界を通じてこの上ない完全な、推理と観察の機械であるが、恋愛のことになると、どうも勝手がわからぬらしい。彼は、嘲笑や皮肉なしに恋愛を語ったことはない」
「ボヘミア事件」A Scandal in Bohemiaの冒頭で、ワトソンはシャーロック・ホームズのことを以上のように語っている。これでわかるように、彼は冷静な、推理一点張りの人間で、この人の頭には、感情の入り込む席などはとってないらしい。ルパンなどは理知と感情とが並行していて、恋人に対する情熱などは、彼の驚くべき理知力を生むかまどのように思われるが、ホームズになると、恋愛やその他の感情は、推理を狂わせる邪魔者になっているようである。
「カッパー・ビーチス事件」(「ぶな屋敷」)The Adventure of the Copper Beechesの中でホームズがワトソンと二人で「霧につつまれたベーカー街」を抜け出して、アルダーショット付近の田舎へ行くところがある。そこでワトソンが、「何とすばらしい絶景じゃないか?」というと、ホームズは重々しく頭を振って、「君はこのばらばらに散在している家屋を見て美しいと感じるが、僕は、これを見ると、家が一軒々々孤立しているから、人に知られず、罰せられずに罪を犯すことができるという感じしか浮かばんよワトソン君」という。するとワトソンは「冗談じゃ…

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