えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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都会と田園
とかいとでんえん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本 野口雨情 第一巻」 未来社
1985(昭和60)年11月20日
入力者川山隆
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-06-03 / 2014-09-21
長さの目安約 18 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#ページの左右中央]


序詩


空の上に、雲雀は唄を唄つてゐる
渦を巻いてゐる太陽の
光波にまかれて
唄つてゐる――


[#改ページ]

時雨唄


雨降りお月さん
暈下され
傘さしたい
死んだ母さん、後母さん

時雨の降るのに
下駄下され
跣足で米磨ぐ
死んだ母さん、後母さん

柄杓にざぶざぶ
水下され
釣瓶が[#「釣瓶が」は底本では「鈞瓶が」]重くてあがらない
死んだ母さん、後母さん

親孝行するから
足袋下され
足が凍えて歩けない
死んだ母さん、後母さん

奉公にゆきたい
味噌下され
咽喉に御飯が通らない
死んだ母さん、後母さん


曲り角


銀行員のFさんは
新しい背広を着て――大足に出ていつた
黒いソフト、光る靴
暖い日の
午前九時頃

曲り角でバツタリ
A子さんと行き逢つた
(オヤ! オヤ!)
すらりとした――
桃割れ、白い歯

Fさんの顔
A子さんの眼
(オヤ! オヤ!)
二人はすれ違ふ
胸の動悸


柿の木のエピソード


背戸の畑の柿が赤くなつて来ると毎日烏が集つて来て喰つてゐた
子供に番をさせて置いても
烏は毎日来た

親父は洗濯竿の先へ
鶏の羽根をぶら下げて
柿の木の傍へ
立てて置いた

鶏の羽根が
ふわふわ動いてゐる
烏は遠くから見てゐて
来なかつた

時折、別な烏が来ても
鶏の羽根が動くとすぐに飛んでゆく
親父も子供も
安心して喜んでゐた

一晩風が吹いた
朝の暗い内から柿の木で烏が鳴いてゐた
洗濯竿が畑の中に倒れてゐる
子供は駈けて来て親父に咄した


曼陀羅華


何処から種が飛んで来たのか
畑の中に
曼陀羅華が生えてゐる

百姓は
抜いて捨てようと思つてゐる中に
夏が来た

曼陀羅華は
葉と葉の間から
白い花を咲かうとしてゐる

百姓は
花なんか咲かせて置くもんかと
独言を云つてゐた

たうとう秋になつて了つた
曼陀羅華の花は
すつかり実になつてゐる

百姓は憤つて――手をかけると
皆んな実は畑の中へ
ぱらぱらはぢけて飛んだ


二人


歳の暮れも押し迫つて来てゐるのに
間借りしてゐる二人は
これからさき、どうすればいいのか
途方にくれてゐる

二人は
小さな火鉢を中にして
痛切に――お互に――暮しませうと云つてゐるが
矢張り涙にくれてゐる

二人は
昨夜も、同じやうな夢を見た
銀貨だの、米だの、肉だの、炭だの
凩は屋根を鳴らして吹いてゐる


家鴨


うしろの田の中に家鴨の子が
田螺を拾つて喰つてゐると
雁が来た

一所に連れてつてやるから
勢一杯翼をひろげて飛んで見ろと
雁が云つた

家鴨の子は一生懸命飛んで見たが
体が重くてぼたりぼたり落ちて了ふ
雁は笑ひ笑ひ飛んで行つて了つた

家鴨の子は泣き泣き小舎の前に帰つて来た
親家鴨は
桶の中へ首を入れて水を呑んでゐた

子家鴨は
別な良い翼をつけて呉れろと
大声…

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