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取り交ぜて
とりまぜて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」 ちくま文庫、筑摩書房
2007(平成19)年7月10日
初出「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2008-10-23 / 2014-09-21
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

     ○

 高橋五郎氏に聴いた話である。同氏の親戚の某氏が、或る晩に甥の某氏と同じ部屋に寝た。その時分に親戚に病人が有った。その病人がその晩に、夢に某氏を尋ねて来て、快談して帰った。翌朝眼が醒めたから、某氏は甥の某氏にその夢の話をした。すると甥もそれと同じ夢を見たと云った。
 病人は、それから三四日経って死んだ。通夜の晩に、その病人を看護した看護婦がまた不思議な夢を見たことを話した。丁度某氏等が同じ夢を見た晩と同じ晩の同じ時刻に、その病人が『今、自分は、色んな人に逢て、色んな愉快な話をして来たので、宜い心持になった』と言った夢を見た。

     ○

 足、その地を踏んだでもなく。画でその地の景色を見たでも何でも無いのに、始終、夢に或地の景色を見る。一日、不図或る道へ出た。するとその道は夢に、その或る景色を見に行く道に寸分違わぬ。あまりの不思議さにその道を辿って行たら、果然、夢に見馴れた景色のその土地に到着した。これは自分の友人が親しく実見した奇話である。
 弘治二年に戦没した先祖の墓は幾百年の星霜を経て、その所在地は知られなかった。すると或る晩に、その墓は五輪の塔で、こういう木の下に埋まっていると夢に見たので、その翌日檀那寺へ行って、夢に見た通り探がすと果して見付った。これも友人が最近に見た正夢である。

     ○

 十時頃にならねば眼が醒めぬという朝寝坊の友人が実見した事柄である。眼の醒める時分に眼を醒ますと、いつでも床の間に若い女の顔が見える。しばらくして始めて消える。しかもその顔は、曾て一度も見たことのない顔である。また、これとは変って、毎晩、恐ろしい男の顔を見る友人があった。その友人は、遂に辛棒仕切れなくなって、夜になると、友人の下宿へ行って寝た。

     ○

 鹿児島の高等学校に行っておる自分の従弟が先日来ての話である。
 夜中にその室の襖が開く、そうすると次の室が見え透く。不思議に思って翌朝その事を次の室の友人に話すと、那[#挿絵]ことは知らぬという。その翌晩には友人がその室に寝たら、矢張前夜の通り、襖が開いてその次の室が見え透いた。そこで、その翌晩は二人がその室に寝たら、一人は矢張前晩の通り見たが、一人は非常に魘された。

     ○

 熊谷のさる豪農に某という息子があったが、医者になりたいという志願であったから、鴻の巣の某家に養子に与った。医師の免状も取って、業も開き、年頃の娘を持つくらいの年になってから、重症に罹って、永く病床に呻吟した。
 その養父というのが、仲々の飲酒家で、固より資産の有る方ではないから、始終家産は左向であった。熊谷ではもしも養父が亡くなったら、相当な資産は与るといっていた。某もそれを楽みにしていたのである。
 或る日のこと、熊谷の家、鴻の巣で寝ている筈の某が訪ねて来た。女の衣服の上へ法衣を被て…

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