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鰻の話
うなぎのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人の食卓」 グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2010-01-29 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は京都に生まれ、京都で二十年育ったために、京、大阪に詳しい。その後、東京に暮して東京も知るところが多い。従って批判する場合、依怙贔屓がないといえよう。うなぎの焼き方についても、東京だ大阪だと片意地はいわないが、まず批判してみよう。
 夏の季節は、どこも同じように、一般にうなぎに舌をならす。従ってうなぎ談義が随所に花を咲かせる。うなぎ屋もこの時とばかり「土用の丑の日にうなぎを食べれば健康になる」とか「夏やせが防げる」とかいって、宣伝にいとまがない。
 一般的に、食欲の著しく減退しているこの時期に、うなぎがもてはやされるというのは、うなぎが特別扱いに価する美味食品であることに由来しているようだ。だが、ひと口にうなぎといっても、多くの種類があり、良否があるので、頭っからうなぎを「特別に美味いもの」と、決めてかかるのはどうだろうか。
 ここで私のいわんとする美味いうなぎとは、いわゆる良質うなぎを指すのである。「美味い」ということは、良質のものにのみいえることであって、食べてみて不味いうなぎをよいうなぎとはいわないだろう。その上、不味いものは栄養価も少ないし、食べても跳び上がるような心のよろこびを得ることができない。また、同じ種類のものでも、大きさや鮮度のいかんによって、美味さが異なるから、うなぎという名前だけでは、美味いとか栄養価があるとかいう標準にはなるまい。
 うなぎは匂いを嗅いだだけでも飯が食えると下人はいうくらいだから、なるほど、特に美味いものにはちがいない。人々の間では、「どこそこのうなぎがよい」というようなお国びいきもあるし、土地土地の自慢話も聞かされるが、東京の魚河岸、京阪の魚市場に代表的なものがある。素人ではうなぎの良否の判別は困難だが、うなぎ屋は商売柄よく知っているので、適当な相場がつけてある。従ってよいうなぎ、美味いうなぎは、大方とびきり値段が高い。美味さの点をひと口にいえば、もちろん、養殖うなぎより天然うなぎの方が美味である。そのいわれは、季節、産地、河川によって生ずる。
「何月頃はどこそこの川のがよい」「何月頃はどこそこの海だ」というように、季節や場所によって、その美味さが説明される。このことはうなぎの住んでいる海底なり、餌なりがかわるからなのであって、うなぎは絶えずカンをはたらかし、餌を追って移動しているようだ。
 彼らの本能的な嗅覚は、常に好餌のある場所を嗅ぎ当てる。好餌を発見すると、得たりとばかりごっそり移動し、食欲を満足させる。彼らが最も好む餌を充分に食っている時が、我々がうなぎを食って一番美味いと感ずる時で、この点はうなぎにかぎらず、あらゆるものについても同様に解明できよう。
 例えば、つばめだってそうだ。世間では相当のインテリでさえ、つばめの移動を「寒さからのがれるために暖地へおもむく」と子どもたちに教えているようだが、それは…

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