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信濃国
しなののくに
副題明治三十二年
めいじさんじゅうにねん
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「淺井洌」 松本市教育会
1990(平成2)年12月20日
初出「信濃教育会雑誌  第一五三号」1899(明治32)年6月号
入力者大野晋
校正者川山隆
公開 / 更新2010-01-21 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




信濃の國は十州に
境つらぬる國にして
山は聳えて峯高く
川は流れて末遠し
松本伊那佐久善光寺
四つの平は肥沃の地
海こそなけれ物さはに
萬たらわぬことそなき

四方に聳ゆる山々は
御岳乘鞍駒か岳
淺間は殊に活火山
いつれも國の鎭めなり
流れ淀ます行く水は
北に犀川千曲川
南に木曽川天龍川
これまた國の固めなり

木曽の谷には眞木茂り
諏訪の湖には魚多し
民のかせぎは紙麻綿
五穀みのらむ里やある
しかのみならす桑取て
蠶養の業の打ひらけ
細きよすかも輕からぬ
國の命をつなくなり

尋ねまほしき園原や
旅のやどりの寐覺の床
木曽の棧かけし世も
心してゆけ久米路橋
くる人多き束摩の湯
月の名にたつ姨捨山
しるき名所とみやびをが
詩歌によみてぞ傳へたる

旭將軍義仲も
仁科五郎信盛も
春臺太宰先生も
象山佐久間先生も
皆この國の人にして
文武のほまれたくひなく
山と聳へて世に仰き
川と流れて名は盡きす

吾妻はやとし日本武
嘆き給ひし碓氷山
うがつとんねる二十六
夢にも超ゆる[#挿絵]車の道
道ひとすちに學ひなば
昔の人にや劣るべき
古來山河の秀でたる
國は偉人のあるならひ



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