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真珠抄
しんじゅしょう
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「白秋全集 3」 岩波書店
1985(昭和60)年5月7日
入力者飛鷹美緒
校正者フクポー
公開 / 更新2017-01-25 / 2016-12-09
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]


印度更紗の言葉

心ゆくまでわれはわが思ふほどのことをしつくさむ。ありのまま、生きのまま、光り耀く命のながれに身を委ねむ。れうらんたれ、さんらんたれ。わがうたはまた、印度更紗の類ひならねど渋くつや出せ、かつ煙れ。
千九百十四年九月
白秋


[#改丁]

真珠抄 短唱

わが心は玉の如し、時に曇り、折にふれて虔ましき悲韻を成す。哀歓とどめがたし、ただ常住のいのちに縋る。真実はわが所念、真珠は海の秘宝、音に秘めて涙ながせよ。

潤ほひあれよ真珠玉幽かに煙れわがいのち

永日礼讃

ひと日海のほとり、斜なる草原の中に寝ころびぬ。日の光十方にあまねく、身をかくすよすがもなし。真実にただひとり、人間ものもあらざれば感極まりて乃ち涙をぞ流しける。

滴るものは日のしづく静かにたまる眼の涙

人間なれば堪へがたし真実一人は堪へがたし

珍らしや寂しや人間のつく息

真実寂しき花ゆゑに一輪草とは申すなり

哀れなる竜胆の春の深さよ、あな春の深さよな

磯草むらの螽斯鳴かずにゐられで鳴きしきる

宙を飛ぶ燕ひもじかろ燕

鳥のまねして飛ばばやな光の雨にぬればやな

木が光りゆらめくぞよとめどなき鳥春の鳥

あまり冷たし虫の穴さのみ金銀珠玉な鏤めそ

光りて企む虫の角メフイストフエレスが身のこなし

とめどなや風がれうらんとながるる

なびけば光る柳の葉光らぬ時が怖やの

山が光る木が光る草が光る地が光る

片面光る槐の葉両面光る柳の葉

勿体なや何を見てもよ日のしづく日の光日のしづく日の涙


源吾兵衛


玉ならば真珠一途なるこそ男なれ

心から血の出るやうな恋をせよとは教へまさねどわが母よ

蜥蜴が尾をふる血のしみるほどふる

悲しや玉虫が頭の中に喰ひ入つたわ

病気になつた気が狂れた一途な雛罌粟が火になつた

百舌のあたまが火になつた思ひきられぬきりやきりきり

散ろか散るまいかままよ真紅に咲いてのきよ

人目忍ぶはいと易しむしろわが身を血みどろに突かしてぢつと物思ひたや

日はかんかんと照りつくる血槍かついでひとをどり耶蘇を殺してユダヤの踊をひとをどり

ふくら雀は風にもまるる笑止や正直一途の源吾兵衛はひよいと世に出て人にもまるるもまるる

冥罰を思ひ知らぬか赤鼻の源左めなまじ生木を腕で折る

息もかるし気もかるしいつそ裸で笛吹かう


月光礼讃


猫のあたまにあつまれば光は銀のごとくなりわれらが心に沁み入れば月かげ懺悔のたねとなる


巡礼


ひとり旅こそ仄かなれ空ははるばる身はうつつ

巡礼のふる鈴はちんからころりと鳴りわたる一心に縋りまつればの


雪の山道


親鸞上人ならねども雪のふる山みちをしみじみと越え申す雪はこんこん山みちを


幼帝


王冠燦爛日燦爛涙こぼせばなほ燦爛

王冠にひよいと来てとまる蜻蛉とんぼ重いか眩し…

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