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電信柱と妙な男
でんしんばしらとみょうなおとこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 1」 講談社
1976(昭和51)年11月10日
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者ぷろぼの青空工作員チーム校正班
公開 / 更新2012-01-08 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある町に一人の妙な男が住んでいた。昼間はちっとも外に出ない。友人が誘いにきても、けっして外へは出なかった。病気だとか、用事があるとかいって、出ずにへやの中へ閉じこもっていた。夜になって人が寝静まってから、独りでぶらぶら外を歩くのが好きであった。
 いつも夜の一時ごろから三時ごろの、だれも通らない町の中を、独りでぶらぶらと歩くのが好きであった。ある夜、男は、いつものように静かな寝静まった町の往来を歩いていると、雲突くばかりの大男が、あちらからのそりのそりと歩いてきた。見上げると二、三丈もあるかと思うような大男である。
「おまえはだれか?」と、妙な男は聞いた。
「おれは電信柱だ。」と、雲突くばかりの大男は、腰をかがめて小声でいった。
「ああ、電信柱か、なんでいまごろ歩くのだ。」と、妙な男は聞いた。
 電信柱はいうに、昼間は人通りがしげくて、俺みたいな大きなものが歩けないから、いまごろいつも散歩するのに定めている、と答えた。
「しかし、小男さん。おまえさんは、なぜ、いまごろ歩くのだ。」と、電信柱は聞いた。
 妙な男はいうに、俺は世の中の人がみんなきらいだ。だれとも顔を合わせるのがいやだから、いま時分歩くのだ。と答えた。それはおもしろい。これから友だちになろうじゃあありませんかと、電信柱は申し出た。妙な男は、すぐさま承諾していうに、
「電信柱さん、世間の人はみんなきらいでも、おまえさんは好きだ。これからいっしょに散歩しよう。」といって、二人はともに歩き出した。
 しばらくすると、妙な男は、小言をいい出した。
「電信柱さん、あんまりおまえは丈が高すぎる。これでは話しづらくて困るじゃないか。なんとか、もすこし丈の低くなる工夫はないかね。」といった。
 電信柱は、しきりに頭をかしげていたが、
「じゃ、しかたがない。どこか池か河のふちへいきましょう。私は水の中へ入って歩くと、おまえさんとちょうど丈の高さがおりあうから、そうしよう。」といった。
「なるほど、おもしろい。」といって、妙な男は考えていたが、
「だめだ。だめだ。河ぶちなんかいけない。道が悪くて、やぶがたくさんあって困る。おまえさんは無神経も同然だからいいが、私は困る。」と、顔をしかめて不賛成をとなえだした。
 電信柱は、背を二重にして腰をかがめていたが、
「そんなら、いいことが思いあたった。おまえさんは身体が小さいから、どうだね、町の屋根を歩いたら、私は、こうやって軒について歩くから。」といった。
 妙な男は、黙ってうなずいていたが、
「うん、それはおもしろそうじゃ、私を抱いて屋根の上へのせてくれ。」
と頼みました。
 電信柱は、軽々と妙な男を抱き上げて、ひょいとかわら屋根の上に下ろしました。妙な男は、ああなんともいえぬいい景色だと喜んで、屋根を伝って話しながら歩きました。するとこのとき、雲間から月が出て、おたが…

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