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赤土へくる子供たち
あかつちへくるこどもたち
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 12」 講談社
1977(昭和52)年10月10日
初出「せうがく三年生」1939(昭和14)年6~12月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2016-11-19 / 2016-10-28
長さの目安約 33 ページ(500字/頁で計算)

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本文より



 釣りの道具を、しらべようとして、信一は、物置小舎の中へ入って、あちらこちら、かきまわしているうちに、あきかんの中に、紙につつんだものが、入っているのを見つけ出しました。
「なんだろうか。」
 頭を、かしげながら、ほこりに、よごれた紙を、あけてみると、べいごまが、六つばかり入っていました。信一は、急になつかしいものを、見いだしたようにしばらくそれに見入っていました。そのはずです。一昨年の春あたりまで、べいごまが、はやって、これを持って原っぱへ、いったものです。それが、べいのやりとりをするのは、よくないというので、お父さんからも、先生からも、とめられて、ついみんなが、やめてしまったが、ただ記念にしようと思って、これだけすてずに、紙に包んで、しまっておいたことを、思い出しました。
「やはり、こまはおもしろいなあ。」
 お天気はいいし、子供たちのあそんでいる声が、きこえるし、もう信一は、じっとして、家にいることが、できなかったのです。べいごまを、ふところへ入れると、赤土の原っぱをさして、出かけていきました。
 原っぱには、武ちゃんや、善ちゃんや、勇ちゃんたちが、あそんでいました。
 信一は、ふところから、べいを取り出して、土の上で、まわしてみました。これを見つけると、善吉が、遠くからかけてきました。
「信ちゃん、なにしてんだい。」と、さけびました。
「なんでもない、ただ、まわしてみたんだよ。」と信一は、べいをひろい上げて、また紙の中へ、入れました。
「君、べいごま?」
「うん、そうだよ。」
「いくつ、持っているの?」
「六つしかない。」
 善吉は、あんなに、たくさん持っていたのに、どこへやったのかと、いわぬばかりの顔つきをして、信一を見ました。
「あんなにあったのを、どうしたんだい。」
「みんな川へすててしまった。」
「おしいことをしたね。」
「だって、お父さんが、すてろといったから。」
 善吉は、自分も同じようなめに、あったことを、思い出していました。
「君は?」と、こんどは、信一がたずねました。
「ぼくは、いま十個持っているよ。あとは、ごみ箱へ、すててしまったのさ。」
 善吉が、こう答えると、信一は、目をまるくして、
「いまなら、くず屋さんにやると、いいんだね。ごみ箱の中へ、すてたりして、おしいなあ。」と、いいました。
「ぼくも、十個かくしておいたのを、持ってこようか。」と、善吉は、いいました。
「あ、持っておいでよ。」
 このとき、あちらから、勇二と武夫が、
「なにしているの。」と、口々に、わめきながら、やはり、かけてきました。
「べいごま。」
「ぼくも持っているよ。」
「いくつ?」
「ぼくは、十五個ばかり。」と、武夫が、いいました。
「おお、たくさんあるんだな。」と、みんなが、感心しました。
「勇ちゃんは、持っていないの。」
「僕は、十個ばかり。」と…

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