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イーリアス
イーリアス
副題02 例言
02 れいげん
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「イーリアス」 冨山房
1940(昭和15)年11月15日
入力者山本寛
校正者小林繁雄
公開 / 更新2010-10-15 / 2014-09-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

(一) 梗概


「イーリアス」とは「イーリオン(トロイエー即ちトロイア)の詩」といふ意味である。本詩の歌ふところは、アカイア(ギリシヤ)軍勢が十年に亙つて、小亞細亞のトロイアを攻圍した際起つた事件中の若干部分である。是より先、トロイア王プリアモスの子パリス(一名アレクサンドロス)が、スパルタ國王メネラーオスの客として歡待された折、主公の厚情を裏切つて、絶世の美人、王妃ヘレネー(ヘレン)を誘拐して故國に奪ひ去つた。ヘレネーは其昔列王諸侯が一齊に望む處であつたが、遂にメネラーオスの娶るところとなつた。其以前に佳人の父は彼等に、誰人の妻となるにせよ、若し其夫より佳人を奪ふ者あらば、協力して夫を助けて[#挿絵]夫を膺懲すべしとの盟を立てさせた。かういふ次第でメネラーオスの兄、ミケーネー王アガメムノーンが、列王諸侯を四方から招いて聯合軍、略十萬人を率ゐて、舟に乘じてトロイアの郷に上陸し、十年の攻圍を行つたのである。トロイアは死力を盡くして城を防いだ。しかし城を出でて戰ふことを敢てしない。トロイア軍中第一の勇將ヘクトールさへも敵し得ない英雄アキリュウスが、聯合軍に加つてゐたからである。然るに十年目に聯合軍中に内訌が起つた。總大將アガメムノーンが威に誇つて、一女性の故により、アキリュウスを辱しめたのである。後者は激しく怒つて、もはや聯合軍のために戰ふことはしないと宣言して、部下の將士を纒めて岸上の水陣へ退いた。「イーリアス」はこゝから筆を起す。「神女よ、アキリュウスの怒を歌へ」と。アキリュウスの怒及び其結果、最後に其怒の解消――以上が「イーリアス」の中心題目である。此を中心としてトロイア落城の前五十一日間に起つた種々樣々の事件が詩中に歌はれてゐる。アキリュウスが退陣したのでトロイア軍は進出した。二十四卷の「イーリアス」中、初の十五卷は兩軍相互の勝敗の敍述である。後にトロイアが優勢となりアカイア軍は散々に敗退する。其時アキリュウスの親友パトロクロスは之を坐視するに忍びず、友の戰裝を借り、進んで勇を奮つて數人の敵將を斃したが、最後にヘクトールに殺され、其戰裝が剥ぎ取られる。之に於てアキリュウスは、初めて猛然と立ちあがり、アガメムノーンと和解して戰場に躍りいで、敵軍一切を城中に追ひ攘ひ、只一人踏み留つたヘクトールを斃して、パトロクロスの仇を討ち、屍體を兵車に繋いで之を友の墓のめぐりを曳きづり行くこと十日以上に及ぶ。其後敵王プリアモスは神命により、竊かに人目を掠めてアキリュウスの陣を訪ひ、賠償を出して愛兒の屍體を乞ふた。アキリュウス之を許して數日の休戰を承諾する。敵王は屍體を城中に携へ歸り葬儀を行ふ。「イーリアス」はこゝに終る。
 なほ二十四卷の一々に亙つてその梗概を記せば左の通りである。
 第一 アポローンの祭司クリューシュース、アガメムノーンに辱しめられ、復讐を祈る(第一日…

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