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ペスをさがしに
ペスをさがしに
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 10」 講談社
1977(昭和52)年8月10日
初出「児童読物研究」1933(昭和8)年2月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-04-13 / 2014-09-16
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 土曜日の晩でありました。
 お兄さんも、お姉さんも、お母さんも、食卓のまわりで、いろいろのお話をして、笑っていらしたときに、いちばん小さい政ちゃんが、
「ぼく、きょうペスを見たよ。」と、ふいに、いいました。
 すると、みんなは、一時にお話をやめて、政ちゃんの顔を見ました。
「政ちゃん、ほんとうかい。」と、正ちゃんが叫びました。
「ほんとうに、見たよ。」と、政ちゃんは、まじめくさって答えました。
「まあ、逃げてきたんでしょうか?」と、姉さんは、おどろいた顔つきをなさいました。
「ペスなら、逃げてきたんでしょう。よく逃げてこられたものね。」と、お母さんは感心なさいました。
「ペスでない、きっとほかの犬だよ。政ちゃんは、なにを見たのかわかりゃしない。」と、いちばん上の達ちゃんが、いいますと、
「うそかい、ぼく、ほんとうに、見たんだから。」と、政ちゃんは、目をまるくしました。
 みんなが、そう疑うのも、無理はありません。昔から、犬殺しにつれられていって、帰ってきた犬は、めったにないからです。
「お母さん、ほんとうでしょうか。ペスだったら、いいけど。」と、お姉さんは、いいました。
「ペスだったら、うちで、飼ってやろうね。」と、正ちゃんがいいました。
「印刷屋の犬じゃないか。」
「だって、あすこでは、もうかまわないのだもの、どこのうちの犬でもないだろう。」
 お兄さんたちは、この後、ペスをどうしてかばってやったらいいかと議論をしました。
「まだ、ほんとうに、ペスかどうか、わかりゃしないじゃないの。」と、お姉さんが、いいますと、お母さんは、ぼんやりとして、お兄さんたちの話をきいている、政ちゃんをごらんになって、
「もう、政ちゃんは、ねむいんでしょう。きっとペスの帰ってきた、夢でも思い出して、いったのでしょう。」と、笑いながら、おっしゃいました。
「あるいは、そんなことかもしれん。」と、いままでペスの今後の相談をしていた、達ちゃんと正ちゃんは、そのほうの話を中止して、もっと、くわしいことを知るために、
「政ちゃん、どこで、ペスを見たんだい。」と、まず正ちゃんは、たずねました。
「橋のところで、遊んでいて、見たんだよ。」
「政ちゃん、ひとりしか、ペスを見なかった?」と、正ちゃんは、さらに、ききました。
「健ちゃんも、徳ちゃんも、みんな見たから……。」と、政ちゃんは、疑われるのが、不平でたまらなかったのです。
「じゃ、明日、徳ちゃんなんかにきいてみるよ。うそなんかいったら、承知しないから。」と、正ちゃんが、いいますと、
「なにも、怒ることはないでしょう。」と、お姉さんが、正ちゃんをにらみました。
「だって、うそをつくことは、わるいことじゃないか。」
「うそをつこうと思っていったのでない。まちがいということは、あるもんでしょう。」と、お姉さんが、おいいなさると、
「まちがいじゃ…

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