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食道楽
しょくどうらく
副題冬の巻
ふゆのまき
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「食道楽(下)」 岩波書店、岩波文庫
2005(平成17)年8月19日
「増補註釋 食道楽 冬の巻」 報知社出版部
1904(明治37)3月28日
初出「報知新聞」1903(明治36)年10月4日~12月27日
入力者砂場清隆
校正者川山隆
公開 / 更新2013-08-05 / 2014-09-16
長さの目安約 348 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#ページの左右中央]


冬の巻



[#改ページ]
[#挿絵]
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○大隈伯爵家温室内の食卓(口絵参照)

 我邦に来遊する外国の貴紳が日本一の御馳走と称し帰国後第一の土産話となすは東京牛込早稲田なる大隈伯爵家温室内の食卓にて巻頭に掲ぐるは画伯水野年方氏が丹青を凝して描写せし所なり。
 この粧飾的温室はいわゆるコンサーバトリーにして、東西七間南北四間、東西は八角形をなし、シャム産のチーク材を撰び、梁部は錬鉄製粧飾金具を用ゆ。中間支柱なく上部は一尺二寸間ごとに椽を置き一面に玻璃を以って覆われ、下部は粧飾用敷煉瓦を敷詰め、通気管は上部突出部および中間側窓と、下方腰煉瓦の場所に設けらる。棚下の発温鉄管は室内を匝環し、冬季といえども昼間七十五度夜間五十五度内外の温度を保つ。周囲における二層の花壇には、絶えず熱帯産の観賞植物を陳列し、クロートン(布哇産大戟科植物譲葉の類)、ドラセナー(台湾およびヒリッピン産千年木の類)、サンセビラ(台湾産虎尾蘭の類)、パンダヌス(小笠原島辺の章魚の木)その他椰子類等はその主なるものにて、これを点綴せる各種の珍花名木は常に妍を競い美を闘わし、一度凋落すれば他花に換え、四時の美観断ゆる事なし。
 この爽麗なる温室内に食卓を開きて伯爵家特有の嘉肴珍味を饗す。この中に入る者はあたかも天界にある心地して忽ち人間塵俗の気を忘る。彩花清香眉目に映じ珍膳瑶盤口舌を悦ばす。主客談笑の間、和気陶然として逸興更に竭くる事なけん。
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第二百七十六 貴夫人の学問

 小山は徐ろに席に就き「中川君、非常に面倒で大きに弱ったがやっと今日埒が明いたよ」とこの一語は天の福音としてお登和嬢の耳に響きぬ。中川も忽ち愁眉を開き「それは全く御尽力の結果だね、さぞお骨が折れたろう」小山「ウム、実に骨が折れた。最初家庭教育の事を大原君に話して洋行の一件を勧めたら大原君も非常に賛成して是非欧米諸国を巡回してみたい、洋行は年来の志願だから何年でも往っていたいとこういうのさ。ところでお代さんの一件はどうするといったら、それはモー婚礼の期が迫っているので婚礼を済ませて行こうというから、それでは何にもならない、君を洋行させる事に尽力したのも全くその災難を遁れしめるためだ、婚礼を済ませる位なら洋行するに及ばんと広海子爵の意見と君の苦心とを委しく話したところ、大原君のいうにはなるほどその厚意は実にありがたい、しかし僕らがお代先生と婚礼せずに洋行したらお登和嬢も僕の帰るまでは嫁に行かないで待っているつもりだろう、一方にはお代先生も待っている、そうすると僕は再び板挟みになって心の苦しみを増すばかりだ、お登和嬢の事は先日も志を打明けて中川君同胞に申出た通り到底天から僕に授からんものと諦めているから僕のために嫁期を失わんより早く外へ好い口を捜してもらいたい、お登和嬢…

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