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随筆 新平家
ずいひつ しんへいけ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「随筆 新平家」 吉川英治歴史時代文庫、講談社
1990(平成2)年10月11日
入力者門田裕志
校正者トレンドイースト
公開 / 更新2013-07-21 / 2014-09-16
長さの目安約 433 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

はしがき





 どうも、序文というよりは、これは“おことわりがき”になりそうです。
 なにしろ、この中に収められた随想や紀行文の一切は、後になって、こんな単行本として纏められるつもりなどはちっともなく、ただ、その時々の必要やら感興やら、また長年にわたる読者のおたずね等に応えるために書いたりしたものが、あらましですから、いま一書として編録されたのを見ますと、まことに布置や祖述の首尾も体を成しておりません。
 いってみれば「新・平家物語」を書きつつあった七年間の副産物にすぎないのです。ですから、完結直後にすぐ別巻として出すような企画もあったのですが、つい私として気のりせず、のびのびにしていたのでした。ところがその後もしきりに、問いあわせて来られる要望も絶えませんし、かたがた、二十四巻という著には、一冊の補遺をかねた著者随感の添加されるぐらいなことは、あった方がむしろ自然で、また主巻を読まれた人々の興を扶けもしようなどといわれて、ではと、ついに出版していただくことになったのです。

 収載中の「筆間茶話」は、週刊朝日のうえで、毎月一回ずつの梗概を“――前回までの梗概に代えて”として書いていたもので、これは従来の型どおりな小説のあらすじといったものでなく、著者と読者とが茶の間に寄ったようなつもりで、おりおりの質疑応答やら私の身辺雑事なども勝手にかきちらしたので、ずいぶん長年の間読者諸兄姉にも、この欄には親しみをおぼえてくれたようでした。
 それと、今となってみて、一そうなつかしいものは、執筆中の寸暇をみては、よく諸所方々へ史蹟歩きに出かけたそのおりおりの紀行です。
 数篇の「新・平家紀行」はそれの所産でありますが、私は青年時代からよく先人の紀行が好きでそれを愛誦したおぼえがあるので、自分も新・平家紀行では、さぐりえた史実の報告やあつかいなどよりも、もっぱら杉本画伯や社の同行者たちをも加えた一種の紀行随筆たることを多少意図して書いておりました。――それも終戦後の日もまだ浅いうちの地方見聞でしたから、今日から振り返ってみると、かえってその頃の世相図を偶然書きおいたようなことにもなって、自分にはよい生涯の思い出ではありますし、読者にもまたべつな興趣がそこに見出されるやもしれません。(中略)



 このほかにも、紀行として書けば、武蔵野周辺やら房総地方、近畿あたりなどの小旅行もしばしばあったのですが、年たつに従って、大部分忘れています。なにしろ私はそんなおりもメモとか写真とか、また日記をつける習慣さえないので、ほとんど忘れ去るにまかすといった懶惰なんです。それがこんなに纏められたのは、まったく「新・平家」起稿以来、それの完成に協力していてくだすった蔭の社中諸兄の御丹精だったと申すほかありません。(中略)

 惜しいのは、これに読者寄稿による「平家村史料」を載せること…

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