えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
予が本年発表せる創作に就いて
よがほんねんはっぴょうせるそうさくについて |
|
作品ID | 52731 |
---|---|
副題 | 努力の不足を痛感す どりょくのふそくをつうかんす |
著者 | 牧野 信一 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「牧野信一全集第一巻」 筑摩書房 2002(平成14)年8月20日 |
初出 | 「新潮 第三十七巻第六号(十二月号)」新潮社、1922(大正11)年12月1日 |
入力者 | 宮元淳一 |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2011-07-17 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
今年は、ほんの短いものまで数へて四篇位ひしか発表しなかつた。書いたのも略同様だつた。「気持」に囚はれて、ついそれをあくどくして了ふのがいけない。様々な意味で努力の足りなかつたことを痛感する。「妄想患者」といふのは今迄書いたものゝうちでも一番長いものだから、いつも繰り返す失敗を可成り注意したつもりだが感じた。だが割合に少なかつたとは思つてゐる。これに就いて見た批評は武林、古賀、武藤、木内、下村の諸氏だつたが、どれにも別段不快はなかつた。武藤君の言葉のうちに、主人公以外の人物が描けてゐないといふのがあつたが、それは斯する処があつてさうしたのだが、さう云はれるのも無理もなかつたと思ふ。決して不快も不満も感じたわけではなかつた。――とにかく自分は努力が足りなかつた。