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おおかみをだましたおじいさん
おおかみをだましたおじいさん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者富田倫生
公開 / 更新2012-03-29 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 北の国の、寒い晩方のことでありました。
 雪がちらちらと降っていました。木の上にも、山の上にも、雪は積もって、あたりは、一面に、真っ白でありました。
 おじいさんは、ちょうど、その日の昼時分でありました。山に、息子がいって、炭を焼いていますので、そこへ、米や、芋を持っていってやろうと思いました。
「もう、なくなる時分だのに、なぜ家へもどってこないものか、山の小屋の中で病気でもしているのではなかろうか。」といって、おじいさんは、心配をいたしました。
「どれ、雪がすこし小やみになったから、俺が持っていってやろう。」といって、おじいさんは村から出かけたのでありました。
 山へさしかかると、雪は、ますます深く積もっていました。小屋へ着くと、息子は達者で仕事をしていました。
「おまえは、達者でよかった。もう米や、野菜がなくなった時分だのに、帰らないものだから、病気でもしているのではないかと、心配しながらやってきた。」と、おじいさんはいいました。
 息子は、たいそう喜びまして、
「私は、明日あたり、村へ帰ってこようと思っていましたのです。」と、おじいさんにお礼をいいました。
 それから、二人は、小屋の中でむつまじく語らいました。やがて、だんだん日暮れ近くなったのであります。
「お父さん、また、雪がちらちら降ってきました。このぶんでは道もわかりますまい。今夜は、この小屋の中に泊まっておいでなさいませんか。」と、息子はいいました。
 たばこを喫いながら、火のそばに、うずくまっていたおじいさんは、頭を振りながら、
「俺は、やりかけてきた仕事がたくさんあるのだから、そんなことはしていられない。今夜は、わらじを五足造らなければならないし、あすの朝は、三斗ばかり米をつかなければならん。」と、おじいさんはいいました。
「いま時分、お父さんを帰すのは、心配でなりませんが。」と、息子は、案じながらいいました。
 すると、おじいさんは、からからと笑いました。
「俺は、おまえよりも年をとっている。それに、智慧もある。まちがいのあるようなことはないから、安心をしているがいい。」といって、おじいさんは、小屋を出かけました。
 道は、もう雪にうずもれて、どこが田やら、圃やらわかりませんでした。しかし、おじいさんは若い時分から、ここのあたりは、たびたび歩きなれています。あちらに見える、遠方の森を目あてに、村の方へと歩いてゆきました。
 このとき、あちらから、黒いものが、こちらに向かって歩いてきました。もとより、いま時分、人間が、歩いてこようはずがありません。おじいさんは、なんだろうと思っていますと、そのうちに近づきました。おじいさんは、体じゅう水を浴びたように、びっくりしました。それは、おおかみであったからです。
 おじいさんは、はじめて息子のいったことを思い出しました。「おお、息子のいうことをき…

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