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空飛ぶ悪魔
そらとぶあくま
副題――機上から投下された手記――
――きじょうからとうかされたしゅき――
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕」 論創社
2008(平成20)年4月30日
初出「新青年 17巻1号」1936(昭和11)年1月
入力者酒井 喬
校正者北村タマ子
公開 / 更新2011-08-06 / 2014-09-16
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より



「ボーイング単座機の失踪。
 坂譲次氏は愛機、四十――年型ボーイング機J・B3A5を駆って、昨十三日午後十時、大阪国際飛行場を離陸したまま、行方不明になった。
 同機は最高速力毎時三百五十哩、航続時間二十五時間の優秀機で、本日未明、金華山沖を東に向って飛行する同機を認めたとの報あるも、真偽不明……」

 明日の新聞には、こうした記事が掲載されるであろう。今午後九時二十分。北緯五十度、東経百六十五度のあたりを、大圏航空路にそって、ただ一路、東に向って飛んでいる。昨夜の十時大阪国際飛行場を出発して、そのままずっと飛行を継続しているのだ。星一つ見えない暗黒の闇だ。が、無気味なほど気流はいい。殆ど操縦棹に触れる必要もないほどだ。航続時間はあと四時間を余すのみ。しかし、二時間もあれば、この手記を終り得ると考える。積載燃料の総てが、消費しつくされる一時間前には、横浜に向けて航行中の北太平洋汽船会社“シルバー・スター号”の船影を認め得るはずだ。
 自分は、この手記を通信筒に入れ、同船の甲板に投下する。




 自分は沙里子をどれほど愛していたことか、彼女も自分には厚意を持っていた。
 そうした事には些の疑いもない。彼女は自分に唇を許したことによって、それを表示したではないか。が、しかし許された者は自分一人ではなかったのだ。私は、そうした事を知ると同時に、競争者であり親友である、清川に手紙を書いた――。
(二人の内、何れかが、彼女から手を引かねばならない。この問題を解決するために三人で面会したい……)
 彼は快諾した。三人は会った。沙里子は二人きりで逢う時のような快活さで云った。
「私はお二人とも同じほど好きよ。同じようにお附合させて頂くわ。けれど、もし、それがいけなかったら、あなた方、お二人で勝手にわたしの対手をおきめなさいよ……ね」
 己が唇を許した二人の男を前に、こうまでも厚顔であり無恥である彼女の態度は、蔑まれるべく十分であった。しかし、私達は明らかに盲ていた。
 自分の体内から、騎士道も武士の魂も抜け去っていた。
「いかなる手段を講じても、彼女は自分のものだ――」
 私は、こう心に決めた、その瞬間、ある卑劣な「決闘」の方法が頭に浮んだのだ。




「――どうした方法で、この問題を解決するんだ」
 彼は詰問するように鋭く云い放った。私は彼の目の前に、週刊雑誌“北極”を置いた。
「これを利用するんだ」
 私はこう云って最後の頁に載せられた社告を彼に示した。

「オーナー・フライヤーの参加を希望す。
 本誌“北極”主催のもとに、本月二十五日、土曜日、午後十時より大阪――東京間を指定区域とせる飛行機による宝探しを挙行する。参加資格はアマチュワー・オーナー・フライヤーに限る。集合場所及び出発点は大阪国際飛行場。
 三機までの共同参加を許し、相互間の無線電話によ…

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