えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

プレスの操作に手工業を加味
プレスのそうさにしゅこうぎょうをかみ
副題――豊田常務の苦心談――
――とよだじょうむのくしんだん――
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「豊田喜一郎文書集成」 名古屋大学出版会
1999(平成11)年4月15日
初出「トヨダニュース 第二号」1936(昭和11)年6月5日
入力者sogo
校正者塚本由紀
公開 / 更新2015-06-14 / 2015-03-08
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

 乘用車を製作するに當つて最も苦心を要するのはボデーのプレスの問題である。自動車製造工業は最近政府の製造事業法の制定を見る等漸次政策的には確立を見つゝあるのであるが、技術的にはまだまだ萠芽期を出でない。然るにも拘らず自動車の需要は産業上、國防上相當程度の大量生産を要求してゐるのであるから、ボデーの製作には何うしてもプレスを用ゐねばならぬし、又國産車のコストを低下せしめる爲にも之を必要とするのである。要するに搖籃期の技術を以て國策上の要求を如何にして充足するかといふ點に製作者としては重大な考慮を要さねばならぬのであるがプレスの問題を中心に、右問題の解決に關し、常務豐田喜一郎氏は初夏のさる日左の如き興味ある談話をなした。

 自動車工業を始めるについて、ボデーの製作を如何樣にするかと云ふ事は誰しも逢着する一大難問題である。
 安くて良いボデーを米國程の大量生産ではなくして作り得る樣に研究せねばならぬ、この事は國産車製造に際して第一に考へねばならない點である。又毎年型を變更しなくても外國車との競爭上それ程見劣りがしない樣に設計する必要があること―之は國産自動車工業確立上第二に考究すべき重點である。私が自動車工業を初めるに當り、右二大難關を如何にして解決しやうかといふ點に非常な研究的衝動を覺え、目下此の目的貫徹の爲日夜努力してゐる樣な次第である。
 わが社の方針は經濟車の生産に在るのであるから、資本を幾ら掛けてもよい、コストが何んなに高くなつても構はないといふ譯には行かない。
 又米國が毎年型を變へるのに對抗するにはわれ/\としては或る程度迄は矢張り新型を出して行かねばならぬ。
 一つの型で米國の樣に何十萬臺分も押せるならば型に相當金を掛けても良いが、我國の自動車に對する需要から見て、年にせい/″\二萬か三萬臺分押せば結構なのであるから、型にのみさう/\資本を投ずる譯には行くまい。だからといつて五年も十年も一種類の型に止まれるものではなく、結局二、三年に一度はその變更は必要である。
 斯く考へ來ると一種類の型で五、六萬臺も押せば、もう新型を考慮せねばならず、型代は可成り大きな金額に達することになる。試みにその見積を米國に取らして見たら、一通りの外廻りだけで約五十萬圓、完全に整へると百五十萬圓位はかゝるといふ事が分つたのであるが、こんな状態では經濟車は出來ない。
 それでは外國人技師を雇入れては何うか、勿論外人技師の手を借りれば型は出來るであらう。しかし彼等は所謂アメリカ式の大量生産手段其の儘を輸入するのではないか、さうだとすればアメリカの如く何十萬臺分を一度に押出す處ではよいが、四、五萬臺を作つたら、もう新型に變へねばならぬ樣なわが國の事情にはこの遣り方は適當でない。
 そこで私は一切外國人の手を借りずに、日本人獨特な考へ方に依り日本の現状に適する樣な型を設計し製作…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko