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日本の伝説
にほんのでんせつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の伝説」 新潮文庫、新潮社
1977(昭和52)年1月15日
初出「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
入力者Nana ohbe
校正者川山隆
公開 / 更新2013-05-15 / 2014-09-16
長さの目安約 212 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

再び世に送る言葉

 日本は伝説の驚くほど多い国であります。以前はそれをよく覚えていて、話して聴かせようとする人がどの土地にも、五人も十人も有りました。ただ近頃は他に色々の新に考えなければならぬことが始まって、よろこんで斯ういう話を聴く者が少なくなった為に、次第に思い出す折が無く、忘れたりまちがえたりして行くのであります。私はそれを惜むの余り、先ず読書のすきな若い人たちの為に、この本を書いて見ました。伝説は斯ういうもの、こんな風にして昔から、伝わって居たものということを、この本を読んで始めて知ったと、言って来てくれた人も幾人かあります。
 日本に伝説の数が其様に多いのなら、もっと後から後から別な話を、書いて行ったらどうかと勧めて下さる方もありますが、それが私には中々出来ないのです。同じような言い伝えを、ただ沢山に並べて見ただけでは、面白い読みものにはなりにくい上に、わけをきかれた場合にそれに答える用意が、私にはまだととのわぬからであります。一つの伝説が日本国中、そこにもここにも散らばって居て、皆自分のところでは本当にあった事のように思って居るというのは、全く不思議な又面白いことで、何か是には隠れた理由があるのですが、それが実はまだ明かになって居らぬのです。私と同様に何とかして之を知ろうとする人が、続いて何人も出て来て勉強しなければなりません。その学問上の好奇心を植えつける為には、よっぽどかわった珍らしい話題を、掲げて置く必要があるので、そういう話題がちょっと得にくいのであります。白米城の話というのを、今私は整理しかかって居ります。十三塚の伝説も遠からずまとめて見たいと思って居ますが、斯ういうのが果して若い読者たちの、熱心な疑いを誘うことが出来るかどうか。とにかくにこの本の中に書いたような単純でしかも色彩の鮮かな話は、そう多くはないのであります。
 最近に私は「伝説」という小さな本を又一つ書きました。これは主として理論の方面から、日本に伝説の栄え成長した路筋を考えて見ようとしたものですが、曽て若い頃にこの「日本の伝説」を読んで、半分でも三分の一でも記憶して居て下さる人であったら、興味は恐らくやや深められたことと思います。それにつけてもこの第一の本が、今少しく平易に又力強く、事実を読む人の心に残して行くことの出来る文章だったらよかろうにと、考えずには居られません。それ故に今度は友人たちと相談をして、又よほど話し方を変えて見ました。日本の文章は、一般にやや耳馴れないむつかしい言葉を今までは使い過ぎたようであります。伝説などの如く久しい間、口の言葉でばかり伝わって居たものにはどうしても別の書き現わし方が入用かと思いますが、その用意もまだ私には欠けて居たのであります。新にこの本を見る諸君に、その点も合せて注意していただかなければなりません。

昭和十五年十一月
[#改…

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