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寂寞
じゃくまく
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-02-26 / 2018-01-27
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


たとふれば戦ひ果てぬ、
日は暮れて二時を経ぬ
なまぐさき荒野の中に
双の眼を弾丸に射られて
なほ黒き呻吟をしのび、
よこたはる負傷の兵の
勇しきわかき心に、
秘めつゝむ苦痛遂に
鈍色の寂寞の気を
吸ふがごと嗚呼われこゝに。

くらがりの冷えたる室に
ひとり居ておもひ沈めば、
空想は蠑螺の殻の
底つ闇たどるがごとく、
鬱憂ははた南蛮の
夜深き荒磯の上に
鋭き銛を腮にうけて
横はる粗膚鮫の
断末魔――濁りゆく眼に
無辺なる闇を見るごと。

愛消えし人の心は
霜の夜の渚の泥に
まみれたる寄居蟹の殻の
冷やかに凍れたるごとし、
土色にはた青銅の
巨鐘の銹のやうなる
寂寞の五百重のなかに
一瞬も千とせのおもひ、
あゝかゝる日の凶時に
人は死に、花は萎れめ。



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