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銭形平次捕物控
ぜにがたへいじとりものひかえ
副題043 和蘭カルタ
043 おらんだカルタ
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「錢形平次捕物全集第十卷 八五郎の恋」 同光社磯部書房
1953(昭和28)年8月10日
初出「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年9月号
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者門田裕志
公開 / 更新2014-05-05 / 2014-09-16
長さの目安約 29 ページ(500字/頁で計算)
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本文より



「親分、子さらひが流行るんだつてネ」
「聞いたよ、憎いぢやないか」
 錢形平次は苦い顏をしました。
「赤ん坊なら何處へ連れて行かれても、それつきり判らなくなるかも知れないが、浚はれるのは大概七つ八つから十二三の子だから何んな場所に賣られたにしても、土地の役人なり御用聞なりに、名乘つて出られさうなものぢやありませんか。江戸だけでも何人あるか知れないが、一人も行方が判らないとは變だねえ、親分」
 ガラツ八の八五郎も、時々は斯う言つた上等の智慧を出すこともあつたのです。
「だから俺は考へて居るのさ、相手の見當だけでも付かなきア、うつかり手は出せねえ、――だがな八、金や品物を盜られたのなら、働いて取返す術もあるだらうが、子供を浚はれた親の身になつて見れば、諦めやうがあるまい。惡事の數も多いが、信夫の藤太の昔から、人の子を取るほど罪の深いものはないなア」
 錢形平次も妙に感傷的でした
「女の子だけを浚ふなら解つて居るが、時々男の子を誘拐す了簡が解らないぢやありませんか」
 八五郎はまだ首を捻つて居ります。
 丁度その時、
「御免下さい、錢形の親分さんは此方で――」
 門口から年配の女の聲、平次の女房お靜は取次に出た樣子です。
「八、また誘拐らしいぜ」
「どうしてそんな事が判るんで、親分」
「女が二人連で、こんなに早く御用聞の家へ來るのはよく/\の用事さ」
「へツ、當るも八卦といふ奴で」
 八五郎はガチヤガチヤをやる眞似をしました。
「金座の勘定役石井平四郎樣の御召使が二人でお出でになりました」
 お靜が取次ぐのを待つて居たやうに、
「到頭俺の繩張内へやつて來たのか、よし/\此邊が乘出しの潮時だらう、丁寧に通すんだよ」
「ハイ」
 引返したお靜、間もなく二人の女を案内して來ました。
「始めてお目にかゝります。私は金座の役人石井平四郎の雇人、霜と申します。御坊ちやまの乳母をいたして居りました。これはお附の小間使春で御座います」
 挨拶をしたのは、四十二三の如何にも實直さうな女、その後ろに小さく控へたのは、十七八の大商人の召使らしい美しい娘です。
「平次は私で、――どんな御用でせう」
「大變な事が起りました」
「坊ちやんが誘拐されたんでせう」
「えツ、ど、どうしてそれを」
「お前さんの顏に書いてある」
「えツ」
 お霜の驚きは大袈裟でした。
「まア、そんな事はどうでもいゝ、――坊ちやんの見えなくなつた、前後の事を詳しく聽かうぢやありませんか」
 平次の調子には、いろ/\の意味が籠つて居さうです。
「かうなんですよ、親分さん、――昨夜戌刻少し過ぎでした。あんまり暑いんで、お春さんが坊ちやんを表の縁臺で遊ばせて居ると、晝買つた花火が箪笥の上にあつた筈だから、持つて來いと仰しやるんださうです。店には多勢人が居るし、まだ往來もある頃だから、何の氣なしにお家へ入つて、花火を搜し…

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