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ベートーヴェンの生涯
ベートーヴェンのしょうがい
副題04 ベートーヴェンの手紙
04 ベートーヴェンのてがみ
著者
翻訳者片山 敏彦
文字遣い新字新仮名
底本 「ベートーヴェンの生涯」 岩波文庫、岩波書店
1938(昭和13)年11月15日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-05-11 / 2014-09-16
長さの目安約 28 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

クールラントの牧師カルル・アメンダ宛

  一八〇一年六月一日、ヴィーン

 親しい善きアメンダ、心からなる友よ。深い感動をもって、悲しみと悦びとの入り交じった気持をもって君の最近の手紙を受け取り、そして読んだ。――君のかわらぬ真情と僕への好意とを何にたとえたらいいだろう。おお、君が僕に対していつでもこんなに親切だということはまったくすばらしい。そうだ、僕には君の友情の確かさがわかる。他のすべての人々と君との相違が僕にははっきり判っている。君はヴィーンの友人とは違う。君は、僕の故郷の土地が生み出すことのある種類の人間たちの一人だ。どんなにたびたび、君が僕の側にいてくれたらと願うことだろう。なぜなら君のベートーヴェンは、自然と創造主とを対手に格闘しながら、非常に不幸に暮らしているのだからね。〔すでにたびたび僕は創造主をのろった。――創造主が自分の被造物を実にやくざな偶然の犠牲にして顧みず、そのため最も美しい花も滅びることがあるのをのろった。〕思ってもみてくれ、僕の一番大切な部分、僕の聴覚がひどく衰えたのだ。君がまだ僕といっしょにいたあの頃、すでにその兆候を感じていたが僕はそれを隠していた。ところで病状はだんだん悪化するばかりだ。再び快方に向くかどうかがはっきり判るのも今後のことだ。これは僕の腹部の病気いかんによることに相違ない。腹の方はほとんど良くなっている。耳の病気も次第に治ってくれることと僕は望みをかけているのだが、しかしよほどむずかしい。こんな病気はいちばん治りにくいのだ。自分にとって親愛なすべてのものを避けながら、しかも利己的な、つまらない人々の中で生きなければならないことはつらい! リヒノフスキーが僕のためにはここでの最も確かな友だといえる。去年以来彼は僕のために六百フローリン投げ出してくれた。僕の作曲がかなり良く売れるので生計の心配から免れている。この頃書く作曲はどれも一曲をすぐに五回売ることができ、報酬もいい。――最近僕はかなりたくさん作曲した。君は×××へ幾つかピアノを注文したそうだが、僕はその荷の一つへ、僕のいろいろな楽譜を入れて送ろう。そうすれば君の費用が幾らかでも省けるわけだ。
 僕が悦んで話ができ、利害を超えた友情をたのしむことのできる一人がここへ来てくれたので僕は大いに慰められている。彼は僕の幼な友だちの一人だ〔(原注――シュテファン・フォン・ブロイニングのこと)〕。すでにたびたび君のことを彼に話して僕はいった、僕が故郷を出て以来、君アメンダこそ、僕の心情が選び採った親友の一人だと。――×××は彼にも気に入らない。真の友情にとっては依然として薄弱すぎる人物だから〔(原注――ツメスカルのことか? 彼はヴィーンの宮廷秘書官であった。そしてベートーヴェンに傾倒していた)〕。僕はその人物および×××を楽器のように感じている――弾きたいときに弾…

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