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工芸の道
こうげいのみち
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「工藝の道」 講談社学術文庫、講談社
2005(平成17)年9月10日
入力者Nana ohbe
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2014-08-30 / 2014-09-16
長さの目安約 335 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

新版の序


 この一冊は、私がかつて工藝の性質について書いた最初のまとまった論文である。もう二十七年も前に書いたものであるから、今からすれば訂正すべき個所もないではないが、しかし本質的な点では、今も正しい見方であると信じる。新版を出すに当って、多少の改訂を加え、また挿絵は全部取りかえ、東西新古の作品から選んだ。
 この本は、当時工藝に関して、未だ見るべき著作が他になかったためもあるが、私の生涯にも深い因縁を結ぶものとなり、この本を通して多くの友達を得、かつまた今日「民藝運動」と呼ばれるものの理論的基礎となるに至ったのである。それ故、私の三十代の著書ではあるが、はなはだ思い出の深いものがあり、多くの読者からの要望もあって、この選集の第一巻に配したのである。
 巻頭にある第一章、すなわち「工藝の美」と題したものは、昭和十七年に別冊の私版本として印刷され、またこの章と、第四章の一部とを合せ、かつて『民と美』の巻頭に入れたことがある。この選集を編むに際し、すべてを再び原位置に戻した。
 工藝の意義がまだ不当に看過されている今日、明日の理解を高めるために、この一冊がなお役立つことを望んでいる。
 差しはさんだ小間絵は鈴木繁男君の筆、校正は浅川園絵さんの労に負う。題扉はいつもの如く芹澤[#挿絵]介兄の技。共に感謝。

昭和二十九年十一月
宗悦

[#改ページ]





 この書は昭和二年四月雑誌「大調和」創刊号から翌年正月号までの間に、「工藝の道」と題して引き続き九回にわたって連載した論文の集録である。上梓するに当って編次を改め、すべてを訂正増補し、各篇を一層有機的に結んだ。
 工藝の諸問題はまだ処女地として残る。あの堆積された美術論に比べては、いかにまだ初歩にあるであろう。不思議にも工藝の意義に関する深い叡智や正しい見通しは未だに語られていない。ほとんどすべては断片的であって整理せられた体系がなく、かついずれも内面的意味に乏しい。まだ耕して培わねばならぬ個所が限りなく拡がる。その土地の性質や何がそこに生い立つかについても見残されまた見誤られたものがはなはだ多い。
 しかし早晩誰かが出てこの未墾の地に鋤を入れねばならぬ。それが耕すに足りる天然の沃野であるということに疑いはない。私はここに最初の難多き準備の仕事に身を置いたのである。すべての開墾者がなすように、私も雑草を抜き去り、石を除き、土塊を砕き、畑を整えようと努めたのである。私はそこに幾個かの種を下ろした。いつか春は廻り芽萌える時は来るであろう。収穫の悦びは来るべき人々の所有である。私のなさねばならぬ務めは、その実の日に備えるための最初の支度である。私は多くの愛と熱情とをもってこの仕事をなした。
 想えばここに現れた一つの思想に到達するために、十有余年の歳月がその観察と内省とのために流れた。そうして過去一ヶ年の…

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