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ありとあらゆるわが思
ありとあらゆるわがおもい
著者
翻訳者上田 敏
文字遣い旧字旧仮名
底本 「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店
1962(昭和37)年12月16日
初出「明星 未歳・一」1907(明治40)年1月
入力者川山隆
校正者成宮佐知子
公開 / 更新2012-11-26 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


ありとあらゆるわが思、「愛」と語りて弛なく
その種々の語の數いと繁きひといろは、
勢猛にわれをしも力の下に壓さむとし、
またひといろは勢を誇り語りて、らうがはし。


あるは望を抱きつゝ、悦われにあらしめつ、
あるは頻にわれをしも憂ひ悲しましむれども、
「憐」仰ぐひとことは、すべての思皆おなじ、
心の底に潛みたる「恐」によりてふるひつゝ。

さてはいづれの思をば、頭の心と定むべき。
語り出むと思へども、語らふべきを吾知らず。
ただ茫然と、迷はしき「愛」の衢にひとり立つ。

かくて思のいづれにも適はむ事を求むれば、
他に詮術のあらばこそ、口惜しけれど吾は唯
身のまもりにと呼はらむ、かたきの姫の「憐」を。



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