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雪を消す話
ゆきをけすはなし
著者
文字遣い旧字新仮名
底本 「霧退治 ―科學物語―」 岩波書店
1950(昭和25)年3月15日
初出「赤とんぼ」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
入力者いしかわけん
校正者塚本由紀
公開 / 更新2014-10-12 / 2014-09-16
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

雪を消す話



[#挿絵]
第1圖 大雪に埋れた農村

 わが國には昔から「六花豐年の兆」という言葉があって、大雪の年は豐作だといって喜んだものである。しかしそれは何も科學的なよりどころのある話ではない。實際に冬の間に降った雪の量と、その年の秋の收穫とを調べてみると、大雪の年に米がたくさん穫れるというようなきまった關係は無い。
 東北地方や北海道などでは、むしろその反對の場合が多いのであって、春さきになってもなかなか雪がとけない年は、作付がおくれて凶作になることの方が多いようである。大雪と豐作とを結びつけて考えたのは、華北や滿洲のように春さき乾燥して水が不足して困る地方のことであろう。ひょっとすると「六花豐年の兆」というのも中國から傳った言葉かもしれない。或は日本でも暖國地方にはそういうこともあるのかもしれない。そういうところならば、冬寒くて雪が多いと害蟲が死ぬというようなこともあり得る。しかしそれもちゃんと調べてみなければほんとうかどうか分らない。昔からの言い傳えというものは、決して馬鹿にはならないが、そうかといって、そのまま信用することも、もちろんいけないのである。
 いずれにしても、東北地方や北海道のように雪の多いところでは、春さき雪の消えるのがおくれることは、農家にとって非常に困ることである。夏の短い北國では、春さきの作付は一日を爭うものである。馬鈴薯などは、朝植えたのと夕方植えたものとでは、もうちがいがあるといわれているくらいである。それはもちろん譬えであろうが、何にしてもそれくらい春の作付というものは、急ぐものなのである。それならば、何とかして春さき人間の力で早く雪を消して、作付をずっと早めたら、大増收になりそうである。實際のところその通りなのであって、今後の北陸東北北海道などの雪の多い地方の科學農業では、この雪消しの問題が、大切な研究題目の一つとして浮び上って來たのである。
 ところが考えてみると、雪消しの問題は、單に東北や北陸、又は北海道だけのことではなく、全日本的な問題なのである。



 これからの再建すべき日本は、少くも今のところ相當長い期間は、農業國として立って行くより外に道がない。アメリカ側も初めからそう言っている通りである。しかし本州四國九州北海道の四つの島で、八千五百萬人の人間が生きて行くことは、今のところでは非常にむつかしい。食糧の輸入が許されても、一千萬石買えば、一石五千圓としても五百億圓という金がいる。それもお札では駄目で、見返り物資がそれだけいる。そういうたいへんな量の物資を毎年毎年食糧だけに拂っていては、とても國家の經濟が續かないであろう。食物というものは、せっかく金をはらって輸入しても、食べてしまえばすぐ無くなってしまう。それでけっきょく今までにない大増産の道を考えるより外に方法がない。
 それについていつか新…

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