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聞書抄
ききがきしょう
副題第二盲目物語
だいにもうもくものがたり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「聞書抄」 中公文庫、中央公論新社
1984(昭和59)年7月10日
初出「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1935(昭和10)年1月5日~6月15日
入力者kompass
校正者酒井裕二
公開 / 更新2016-04-24 / 2016-03-04
長さの目安約 155 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

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その一

改定史籍集覧第十三冊別記類の中に載っている豊内記と云う書は、一名を秀頼事記と云い、大坂の滅亡を見届けた高木仁右衛門入道宗夢の物語を、桑原求徳が書き集めたものであると云うが、同書上巻の一節に石田三成が嫡子隼人正重家の後日譚が見えている。曰く、「嫡子石田隼人ハ其比十二三歳ナリシガ、質容尋常ニ生レ、世ニ賢ク成人シタリ、天下ノ人崇敬シテ冊ヅキハヤシ誉ニシケル、然ルニ関原ノ合戦敗レテ父討死トモ言ヒ、又行方知ラズトモ聞ヘケレバ、後見ノ男ヲ呼デ曰ク、武士ノ家ニ生レテハ十歳ニモ成ヌレバ甲冑ヲ帯シ、軍陣ヘ出デ、討死スルコソ面目トハ承レ、言フニ甲斐ナク我ヲ残シ置給フ事恨ミテモ由ゾナキ、返ラヌ道ト成ヌルコソ哀シケレ、セメテ爰ニテ腹切テ四手ノ山トヤランノ御供スベシ、急ギ介錯セヨト有シカバ、後見ノ男申様ハ、合戦ノ御負ハ疑ナシ、敗軍ノ兵ドモ昨日今日引モ切ラズ馳セ参候、然ドモ三成討死シ給フト申スモノ一人モ無シ、其実否ヲ聞届ケ給フマデハ御待候ベシ、年比父三成ノ御恩深ク蒙シ聖高野山ニ候間暫御忍ビアレ、某御トモ可申ト頼シゲニ言ヒテンケレバ、少童二人召具シテ住狎タル玉ノ床ヲ立出、行衛遥カニ忍ビ給フ、後見ノ男天王寺ノ辺マデハ付タリシガ、其ヨリヤガテ立帰、トリ物シタヽカニシテ行方知ラズ成ニケル、何程才覚アリテ甲斐/\敷トモ義理ヲ知ラヌ誠ノ無者ヲ人ノ後見トハ成スベカラズト、皆人沙汰シアヘリ、隼人正ハ力ナク唯二人ノ小姓ト手ヲトリ級デ徒膚足ニナリ阿部野ヲ指テタドリ行、九月半ノ事ナレバ夜寒シキリニシテ手足モヒヘ、草ノ露分難ク、急グトスレド道見ヘズ、ヤウ/\瓜生野マデゾ付ニケル、三人打向ヒ如何ガセント語レドモ、先ヘ可行道モナシ、隼人正申ケルハ、此アリサマニテ野ニ伏シ山ニ隠レテハ疑ヒ無キ落人ト見知ラヌ人ハ有マジ、本道ヲ露見シテ通ルベシト言ヘバ、此義尤可然トテ其ヨリ境(堺)ノ町ヘ出デ、紀伊ノ道ニカヽリ、七日七夜ヲ歴テ高野山ニ上リ、先大師ノ御前ニ参、我父存命ナラバ二度本意ヲ遂ゲ、討死シ給フナラバ後生ヲ助テ給レト手ヲ合テ深ク念願シ、其後聖ノ御坊ヲ尋テ参ケレバ、世ニ頼モシクコソ隠シ置、随分トハ思ヒシカドモ、逆徒ノ大将ノ子ナレバ其沙汰隠レナクシテ力及バズ、山ヲ下シ、武士ノ手ニワタシ、アヘナク頸ヲバ刎ニケル、二人ノ小姓モサイゴヘハヨセザリケレバ、何方トモナク迷ヒ行ケリ、(中略)其外治部少輔ガ息女ドモ多カリシガ、天下免許ヲ蒙リテ都ノ傍ニ彳ミケレドモ、人ノ情ハ世ニ有ル程昨日ニカハル習ナレバ、洛中ニ栖カネテ西山辺ニ身ヲ遁レ、菜摘水汲薪採リ心ナラズモ世ヲ厭ヒ、佛ヲ供養シテゾ光陰ヲ送ケル」と。此の話はいかにも哀れで、敗将の児の運命はこうもあったであろうかと思われ、一掬の涙を催さしめるが、しかし隼人正の生涯については諸書の所伝がまち/\であって、必ずしも豊内記の説く…

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